中欧オーストリアがワクチン未接種者にロックダウン!その詳細は?

オーストリア
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2021年10月、欧州各地で再びコロナが拡大傾向になる中、中欧オーストリアが感染状況が悪化すればワクチン未接種者にロックダウンなどの規制を課すことを示唆し、議論を呼んでいます。
この記事では欧州在住の筆者が、その詳細をまとめました。【2021年11月22日更新】

ワクチン未接種者に段階的な規制強化!

2021年10月下旬、欧州の多くの国で新型コロナウィルスが再拡大の傾向を見せる中、オーストリアのシャレンベルク首相の発言が注目を集めています。

他の欧州諸国と同様にオーストリアも急速に感染が拡大する中、このまま拡大が続く場合はワクチン未接種者に対し規制強化を行うと警告したのです。
(参照:Deutsche Welleeuronews)

その基準はICU(集中治療室)の使用率としており、ICUにコロナ患者が500人以上またはオーストリア全体のICUの25%に達した場合、レストランやバー、ホテルへの入店や利用はワクチン接種者または感染からの回復者に限定。

さらに同様にコロナ患者がICUに600人もしくは全体のICU数の1/3に達すれば、特定の理由でのみ家から出ることが許可されるとしています。
【2021年11月14日更新】ICU使用率がこの数値に達し、ワクチン未接種者への措置が始まりました。

遡ること2020年冬、まだワクチンが世に出回る前、オーストリアそして欧州の多くの国では、これと同じような厳格なロックダウンを全国民に課していました。

それから1年が経とうとしている2021年、オーストリアではその対象をワクチン未接種者に限定し、飲食店・ホテル・商業施設などを軒並みクローズする完全なロックダウンは避けようという考えがあるのでしょう。

これには当然ワクチン接種を促進させる意図が込められており、一部のワクチン未接種者から強い反発が起こるのは間違いありません。

それではそんな賛否両論の規制を計画するオーストリアは現在、どのような状況なのでしょうか?

【2021年11月22日更新】ワクチン接種者も含めた、全国民へのロックダウンが11月22日から12月12日(予定)まで課されました。

オーストリアのコロナの状況は?

日本でも2021年8月と9月、そして10月では全く状況が変わったのと同様に、オーストリアも世界の各国も、コロナの状況や規制は短期間のうちに目まぐるしく変化・更新しています。

この記事は2021年10月下旬時点の情報を元にしており、その後変更している可能性があることをご了承ください。

まず2021年10月下旬の日々の新規陽性者数と死者数を見てみましょう。(参照:Worldometers.info)

新規陽性者数&死者数

夏に一旦下がっていた数字が上昇し、特に10月以降に急速に増えている事が伺えます。

ちょうど1年前もほぼ同時期の秋に爆発的に感染が拡大した事から、政府が警戒を強めるのも極めて自然と言えるでしょう。

厳密には2020年の10月下旬の日々の新規陽性者数/1日は平均2000人台、2021年は平均3000人台なので、2021年の方が増加しています。

しかし1点決定的に異なるのは、今年は昨年存在していなかったワクチンがある事

では死者数はどうでしょうか?

こちらも夏に比べると緩やかに増加しており、7日毎の平均死者数/1日は7〜8月にはゼロという週もあったのに対し、10月は10人以上に。

これは2020年10月とほぼ同程度の数字です。(陽性者数が多いので率としては減少)

2020年はこの10月以降、陽性者の増大に比例して重症者・死者も激増し、前述の通りロックダウンなどの厳格な措置を数カ月に渡って施行することとなりました。

しかしワクチン接種が行われているのにも関わらず、陽性者数はともかく死者数もあまり抑えられていないというのは気になりますね。

ではオーストリアのワクチン接種率はどれぐらいなのでしょうか?

ワクチン接種率

まず日本経済新聞のデータから、100人あたりのコロナワクチン接種回数をチェックしてみると、2021年10月29日時点でオーストリアは128.4回

同時点で日本は148.3回なので、日本よりずいぶん少ないことが分かります。

欧米に比べてスタートが遅かった日本ですが、ウサギとカメのごとく追い上げて、あっという間に遙か先を走っていたオーストリアやらイギリスやらを追い抜いていた訳ですね。

続いて欧州内の比較として欧州疾病予防管理センター(ECDC)のデータを見てみると、オーストリアの18歳以上でワクチン接種を1回した人の割合は76.5%2回接種した人の割合は72.9%(2021年10月29日時点・以下同様)。

EUとEEA全体の平均がそれぞれ80.3%75.2%なので、いずれも平均よりやや低い事になります。

EUで最もワクチン接種率が低いブルガリアはそれぞれ27.4%25.5%なのでそれに比べればずっと高いですが、ポルトガルアイスランドなど2回接種率がすでに90%を超える国もある中で、それ以降がなかなか進まないまさにカメ状態といった様子。

今回のワクチン未接種者に対する規制強化案は、この停滞気味のワクチン接種キャンペーンに火を点けられるでしょうか?

2020年⇔2021年の国内規制比較

オーストリアでは州ごとに異なる措置をとっています。

各州の全ての規制を一つ一つ記述するのは大変なので、まずは2021年10月下旬の規制の主なポイント在オーストリア日本国大使館から引用します。

〇集会

・25人を超える場合は、入場に陰性証明書、接種証明書、抗体・治癒証明書のいずれかの提示が必要。

・100人を超える場合は当局への届け出を義務付ける。入場には陰性証明書、接種証明書、抗体・治癒証明書のいずれかの提示が必要。

・500人を超える場合は当局の許可を得る。入場には陰性証明書、接種証明書、抗体・治癒証明書のいずれかの提示が必要。

・100人を超える場合は感染対策コンセプトを作成する。

〇公共交通機関・役所

・車内、施設屋内でマスク着用を義務付ける。

〇飲食店

・入場には陰性証明書、接種証明書、抗体・治癒証明書のいずれかの提示が必要。ディスコ等の夜間営業飲食店ではPCR検査による陰性証明書、接種証明書、治癒証明書・隔離通知書のいずれか(2.5G)の提示が必要。

・ディスコ等の夜間営業飲食店を除き、持ち帰りの場合は陰性証明書、接種証明書、抗体・治癒証明書のいずれも不要(屋内マスク着用義務)。

〇宿泊施設

・入場には陰性証明書、接種証明書、抗体・治癒証明書のいずれかの提示が必要。

・飲食店、プール、フィットネスセンターなどの利用には別途、陰性証明書、接種証明書、抗体・治癒証明書のいずれかの提示が必要。

〇商店

・食料品店、薬局の屋内でマスク着用を義務付ける。その他の店舗屋内で接種証明書または治癒証明書・隔離通知書を有さない者に対してマスク着用を義務付ける。

在オーストリア日本国大使館

さらにマスクは原則として“FFP2マスク”と指定。

この他ミュージアムや銀行などの施設でも、接種証明書などを有さない人にはマスク着用義務としています。

これを見るとオランダ在住の筆者からするとすごくキッチリしてる印象ですが、日本では義務でなくても屋内でも屋外でもほとんどの人はマスク着用しているでしょうから、むしろ屋外での着用率の低さに驚くかもしれません。

では1年前の2020年10月はどのような規制があったのでしょうか?

GardaWorldのちょうど1年前の記事を参照にすると、以下のような規制が2020年10月23日より施行されたとのこと。

・屋内の集会は6人まで・屋外は12人まで
・レストランやバーは深夜1時、州によっては22時閉店
・公共エリア、交通機関、商業施設、学校などでマスク着用義務
・プロによるイベントの観衆は屋内1000人・屋外1500人まで
・ザルツブルクのKuchiという街でロックダウン(2020年10月17日〜11月1日)

2021年は条件さえクリアすれば500人以上でも集会ができること、音楽やスポーツイベントの上限人数も撤廃していること、飲食店の営業時間の制限もないことは、大きな違いと言えるでしょう。

以上のデータや情報をざっくりと簡潔にまとめると、オーストリアの状況はこのような感じでしょうか。(※2021年10月下旬の状況)

・2020年の同時期との比較で日々の陽性者数は増加&死者数も同程度

ワクチン接種率は欧州水準ではやや低め、日本よりも低い

2020年の同時期との比較では規制が緩い

いわゆる『withコロナ』を目指す国は「陽性者数の増加は受け入れ、重症者や死者を極力抑えつつ元の生活に戻していく」というのが大方の青写真のはずですが、いざ陽性者数が急増し、割合はいくらか下がってもそれに比例し重症者・死者も増えていけば、難しい判断に迫られます。

規制を再強化するか、医療が崩壊する直前まで『元の生活』を優先するか、ワクチン接種をゴリ押しするか・・・オーストリアもまさにその選択に直面しているのではないでしょうか。

観光客にも適用されるの?【※11月8日更新】

アルプスに面するオーストリアはウィンタースポーツ愛好家にとっては冬のド定番のバカンス先であり、また美しいクリスマスマーケットや大自然に囲まれた温泉リゾートも多くの観光客を魅了します。

しかし感染拡大した際のワクチン未接種者に対する規制強化が国外からの観光客にも適用されれば、観光業がまたしても大打撃を受けるのは避けようがありません

ではこのワクチン未接種者への規制強化案は、オーストリア市民限定なのでしょうか?それとも観光客も対象なのでしょうか?

上記のサイトではそこの明記がされていませんが、別のサイトに2021年冬の観光に関する重要なポイントがまとめられています(参照:The Local)。
【2021年11月8日更新】注:以下の規制はオーストリアのICU使用率によって随時変更します。当サイトでは最新情報を更新できない可能性があるので、必ず各自で最新の各規制を確認するようお願いいたします。(参照:オーストリア政府観光局公式サイト)

・クリスマスマーケットは3G(ワクチン接種証明書or陰性証明書or抗体・治癒証明書)の提示で入場可能2G(ワクチン接種証明書or抗体・治癒証明書)と要登録
・ケーブルカーの利用にも3G2Gが必要(※住民の交通機関として使用されているケーブルカーは除く)
・スキー場やレストラン、バーでも3G2Gの提示

・ワクチンの有効期間は9か月
・各州はより厳格な規制を導入する権限がある

参考までに、2020年冬はクリスマスマーケットは中止、国外からのスキー客は宿泊不可、飲食店もテイクアウト&デリバリーのみetc.など、観光業や飲食業にとっては絶望的な状況だったので、2021年はそんな黒歴史のリピートは避けるぞ!という意志が感じられます。

それはオーストリア政府観光局の公式サイトの“Winter Love”というキャンペーンからも、ひしひしと伝わってくるはず。

事実上完全に観光をストップした2020年冬に対し、2021年は一定の規制を設けた上で国内外からの観光客を受け入れる、と。

ただし最後の項目にあるように、もし状況が悪化すればたちまち規制強化を行う可能性も残されています。
【2021年11月22日追記】11月22日から12月12日(予定)まで全国民へのロックダウンが開始しました。この期間中はクリスマスマーケットなども中止となっています。

本格的な冬のバカンスシーズンが始まる前に規制を整え、ワクチン接種を進め、今起きている感染拡大を抑えてなるべく多くの観光客を受け入れたいというのが政府の切実な願いでしょう。

欧州各国でも同様の流れに?

国民全体にではなくワクチン未接種者にのみ規制強化というのはいかにも激しい議論を巻き起こしそうな案ですが、この手の規制は欧州では珍しくなくなってきています。

いくつかの国の事案を見てみましょう。

イタリア

イタリアは欧州で初めて全労働者にグリーンパス(=オーストリアの3Gと同様)の提示を義務化し、2021年10月15日から施行されています。

飲食店や娯楽施設なら利用せずともまだ生活はできますが、このイタリアの規制は、ワクチン接種証明or回復証明がなければ48時間毎に陰性結果を提示しないと最高€1500の罰金という厳しい措置。

そのためワクチン未接種の労働者には非常に困難な状況で、当然のごとくローマやミラノなど各地で反対デモも起きています。

しかしこの強硬策とも言える措置のおかげもあり、イタリアのワクチン接種率は1回接種済みが18歳以上の87.6%2回接種済みが80.5%と高い水準に。

同じく2021年10月下旬時点でイタリアも感染が拡大傾向にありますが、人口比での新規陽性者数&死者数はオーストリアより少なめ。

今後の動向が注目されます。

ドイツ

同じドイツ語圏であるドイツでも3Gルールは飲食店やホテルの利用、イベント入場時などに適用されていましたが、2021年10月11日からそれまで無料だった抗原検査を有料に(妊婦や12歳以下の子供などの例外は除く)。

ドイツも州によって規制は異なるものの、この3Gから陰性証明を除外し、ワクチン接種証明または回復証明のみを有効とする『2G』にシフトする施設やお店も増えてきているようです。

ドイツのワクチン接種率は1回接種済みが82.7%2回接種済みが79.3%なのでオーストリアやEUの平均より高め。

感染拡大の波はドイツにも来ており、1日の新規陽性者が2万人を超える日もありますが、人口比ではやはり陽性者数も死者数もオーストリアより低くなっています。

オランダ

そして筆者が住むオランダでも、急激な感染拡大に対処すべくワクチン未接種者を対象にした規制強化案が挙がっているようです。

ただしこれには社会を分断させる恐れがあるという反対意見も多く、2021年10月下旬時点ではまだ決定していません。

オランダはワクチン1回接種済みが87.4%2回接種済みが79.6%とオーストリアやEU平均よりも高くなっていますが、やはり頭打ち感は否めません。

そしてオランダでは屋内のマスク着用も不要、いわゆる3Ḡルールが利用されている範囲も少なく、オーストリアより規制がかなり緩め。【注:その後2021年11月6日より感染拡大のため特定の場所でのマスク義務など、一部規制が再強化されました。】

そんな中、Worldometers.infoのデータによると、オランダも直近7日間の人口あたりの新規陽性者数&死者数はオーストリアより低くなっています。

オランダメディアNOSによると、2021年9月1日〜10月3日に入院したコロナ患者のうち3/4、さらにICUで治療を受けた人は4/5がワクチン未接種だったそうで、ワクチンが重症化を抑えるキーになっているのは間違いないでしょう。

まとめ

ワクチン接種は世界中で非常にデリケートなテーマとなっており、まさに社会や世界を分断しかねない要素を持っていると言っても過言ではありません。

このオーストリアが計画・実行したワクチン未接種者のみを対象とした規制強化も、大きな反対の声が上がりました。

結果的にこのワクチン未接種者へのロックダウンを開始してから1週間ほどで全国民が対象となり、またワクチン接種を義務化する方針も明らかになったことから、各地で政府に対する激しい抗議デモも起きているようです。

ともかくオーストリア、そして世界各国がこのパンデミックに勝利する日が1日でも早く訪れることを願います。

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