2022年夏、欧州各国はオミクロン株の流行で強化した渡航制限や国内規制をほぼ撤廃したことで、コロナ前のような本来の賑やかさが戻ってきました。
しかしその一方で、各地の空港では空港の外まで延びる長蛇の列や相次ぐフライトのキャンセルなど、大混乱状態に。
一体どういう状況なのでしょうか?
欧州在住の筆者がまとめました。【2023年6月更新】
スタッフ不足×ストライキでカオスに!
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大量のフライトキャンセル、時に5時間とも6時間とも言われる待ち時間、数時間の遅延に山のようなロストバゲージ・・・
こんな悪夢のような光景が、2022年夏に欧州各地の空港で見られています。
一体何が原因なのでしょうか?
これは2022年4月のニュース記事です:
要は、コロナで航空業界が大量の人員削減→需要回復で人員不足が混雑の要因で、2022年春にすでに混乱が起きていたわけですね。
こちらはイギリスについてのレポートですが、イギリス(特にイングランド)は他のヨーロッパ諸国より少し早い2022年2月にコロナ規制を大幅に緩和していたこと、ブレクジットでパスポートコントロールがあること、世界最大級のヒースロー空港を有することなどから、いち早く問題が表面化した部分はあるでしょう。
このニュースが報じられてから約2ヶ月経った2022年6月、この混乱はさらに巨大化し、かつ欧州各地に拡がっています。
夏のピークシーズンが近づき旅客者数はどんどん増えていくのに対し、空港職員やパイロットの人員確保が間に合っておらず、空港の外まで長蛇の列が伸びることも。
さらに追い打ちをかけるように、ロシアのウクライナ侵攻による物価上昇→労働環境の改善や給与アップを求めて各地でストライキも発生。
ここ2年間旅行を控えていた人が今年こそは!、と高まる需要・そして航空業界や旅行業界もパンデミックによる莫大な損失を取り戻す絶好の機会にも関わらず、なんともやるせない状況ですよね。
ちなみに欧州の中でも現在特に混雑や混乱がひどいとされるのが、筆者が住むオランダのメイン空港であるアムステルダム・スキポール空港なのですが、こちらは第二波の真っ只中だった2020年11月利用時に撮った写真です↓
はい、切ないほどガラガラです。(※この時の搭乗レポートは↓こちらの記事から)
こんな有様では大幅な人員削減に踏み切るのもやむを得ないですし、少ないスタッフに対して旅客者数がこの数百倍あるいは数千倍に膨れ上がれば、凄まじい混雑が起きるのは当然と言えるでしょう。
欧州の空港はどこもヤバいの?
こんな目を覆いたくなるような惨状が、欧州中の空港で起きているのでしょうか?
この記事を書いているのは2022年6月でまだ夏のピークの前なのでこれから状況が変わる可能性はありますが、基本的に空港の混雑は旅客者数に比例する=大きい空港であればあるほど混雑が激しいと考えて良いと思います。
実際に筆者は2022年6月上旬から中旬にかけて欧州のいくつかの空港を利用しましたが、コペンハーゲン(デンマーク)やダブリン(アイルランド)に比べるとリール(フランス)やティラナ(アルバニア)、リヴァプール(イギリス)といった辺りはずっと静かで、ロンドンやアムステルダムのカオスはどこ吹く風といった様子でした。
つまり、欧州の空港がどこもかしこも阿鼻叫喚状態というわけではなく、空港によって状況は千差万別で、かつ曜日・時間帯・ターミナルによっても差があるので、タイミングや運が良ければ通常と全く同じようにスムーズに旅することができるはず。
一方で、ストライキによるフライトキャンセルは大小関わらずどこの空港でも起こりうると考えた方が良いでしょう。
こちらは空港を含むブリュッセルで大規模なデモとストライキが起き、出発便だけでなく到着便も多くがキャンセルになったというニュース記事。
ストライキは空港職員によるものもあれば航空会社によるものもあり、その規模によっては1日で数万人が足止めを食らうことも。
ちなみに筆者もストライキによるものかは不明ですが、2022年6月にEurowingsのケルン(ドイツ)→ダブリンの便が前日の夜に突然キャンセルになったことがありました。
この時は運良くケルンから30分ほどのデュッセルドルフから同じダブリンにフライトが出てたのでそちらを新たに予約しましたが、直前だったこともあってか、元のフライトの約5倍の値段でした。(※数カ月後に補償されました)
なお、現在のフライトのキャンセルや遅延はLCCか大手航空会社かに関係なく発生しています。
カオスの中心地アムステルダム・スキポール空港ではKLMのフライトも容赦なくキャンセルされており(参照記事の一例)、例えば普段遅延が少ない航空会社なら安心かというと、残念ながらそうでもありません。
それだけ空港の混雑が凄まじいということですね。。。
【2022年7月追記】ベルギー⇔イギリスのフライトに搭乗してみた
2022年6月に乗り継ぎも含めると欧州10ヶ国10ヶ所の空港を利用し、大きなカオスに遭遇せず済んだ筆者。
いよいよ本格的な夏のピークシーズンとなる翌7月に、ベルギー・シャルルロワ空港⇔イギリス・マンチェスター空港をLCCの総大将・Ryanairで往復してみました。
行きのシャルルロワ空港には空港の公式サイトの提示に従い2.5時間前、帰りのマンチェスター空港にはRyanairから最低3時間前というメールが来てたのですが、あろうことか空港行きの電車が1本運休になり、同じく2.5時間前に到着。
結論から言うと、行きも帰りも拍子抜けするほどスムーズでした。
2.5時間前の到着が推奨されていたシャルルロワ空港では、セキュリティチェックに約10分、パスポートコントロールは行きの出国時・帰りの到着時共に3分未満。
最低3時間前の到着が推奨されていたマンチェスター空港ではセキュリティチェックに約15分、入国時のパスポートコントロールは自動化ゲートで1分未満・出国時は何もなし。
行きも帰りもほぼ定刻通りに到着し、預け荷物もなかったため到着後もすぐ解放。
が、だからといってシャルルロワ空港やマンチェスター空港、Ryanairなら100%問題は起きませんよ!・・・と言っている訳ではもちろんありません。
結局のところ突然のキャンセルや遅延は運による面も大きく、同じ空港や航空会社を利用しても筆者のように何事もなく搭乗できる場合もあれば、ハプニングに見舞われる場合もあるでしょう。
少なくとも、欧州の東西南北全ての空港が破滅的な状況な訳ではないのは間違いありません。
いつまで混乱は続くの?
で、そんなシッチャカメッチャカな状況はいつになったら終わるの?と、誰もが思いますよね。
例えばこちらのニュースでは、混乱は2022年夏の間は続き秋に落ち着いていくという見立てを述べています。
夏のピークシーズンが過ぎれば旅客者数がぐっと減るので、これは当然と言えば当然の予測ではありますよね。
ただ、今後の正確な見通しを予想するのは極めて難しいと個人的には思います。
まず、各国各地で何千人何万人と穴埋めしないといけない人員が、スムーズに確保できるのか。
秋から冬にかけて、再びコロナの波はやって来ないか。
もし来た場合、どの程度渡航制限が強化されるのか。
ロシアのウクライナ侵攻による物価上昇はどうなるか。
混雑は旅客者数の減少に平行して解消されていくとしても、スタッフのストライキは状況が改善されない限りは続くのではないでしょうか。
また、必死に人員をかき集めたとして、またコロナの波が来たらどうなるのでしょうか。
当面は航空業界や旅行業界にとって、頭の痛い状況は続くかもしれません。
【2023年5月更新】混乱は2023年以降も続く可能性大?!
2022年夏の大混乱から1年が経つ2023年、どうやら欧州各地の空港のカオスは完全には解決されない見通しのようです。
空港によっては2022年の教訓からスタッフ不足を解消し、状況は改善しているようですが、ストライキは各国各地で定期的に起きています。
参考記事の例(英語):
また、こちらはLCC最大手のRyanairの公式サイトからの記事ですが、ストライキの本場フランスでは2023年に入ってから5月時点ですでにRyanairのフライトだけでなんと4000便以上もストによるキャンセルが出ているそう。
他の航空会社のフライトも合わせるとさらに凄まじい数のフライトがキャンセルされていることになり、残念ながら夏に向けての懸念材料は残ったままだと言っていいでしょう。
なるべくスムーズに旅するためには?
しかしどれだけ空港がカオスだろうと旅行がしたい、あるいは仕事などで飛行機を使わないといけない、という人は山ほどいます。筆者もそのうちのひとりです。
では少しでも快適に空の旅を楽しむには、どうしたら良いのでしょうか?
いくつかのポイントを挙げてみましょう。
フライト予約前
まず、フライトを予約する前に利用予定の空港の公式サイトをチェックすることを強くおすすめします。
各国で空港の混雑が激しくなる中、多くの空港のHPでは混雑度や推定待ち時間などの最新情報を公開しているため、非常に参考になります。
このような特別ページがなくても、出発便と到着便の予定時間&実際の出発or到着時間を見ると、その空港の発着便がどの程度定刻通りに進んだかが分かるので、もしキャンセルや大幅な遅延がズラッと並んでいたら、注意した方が良いかもしれません。
もっとも状況は1〜2週間で大幅に変わる可能性も充分あるため(良化/悪化)、何ヶ月も先のフライトを予約する場合にはあまり参考にならないことをご了承ください。
前述の通りストライキによる混乱は予測が難しいですが、混雑度は基本的に空港の旅客者数に比例するため、主要空港をなるべく避けるのも一案です。
wikiさん(英語)によると、コロナ前の2019年の欧州の忙しい(=利用客数が多い)空港ランキングでは、
1位:ロンドン・ヒースロー空港
2位:パリ・シャルル・ド・ゴール空港
3位:アムステルダム・スキポール空港
となっており、いずれもまさに現在カオスの主役級の面々。
混雑度と同様にロストバゲージの多さも、小さい空港<大きい空港という認識で良いでしょう。
特にLCCがメインの空港はアクセスが不便な場合もありますが、主要空港で5時間も待たされたりするのであれば、選択肢に加えても良いのではないでしょうか。
フライト予約後〜搭乗日前
フライトを予約したら、航空会社から何かメールが来ていないかを忘れずにチェックしましょう。
特に、
・何時間前に空港に行くべきか
・オンラインチェックインのやり方やタイミング
・預け荷物や手荷物についてのルール
・フライト変更情報(キャンセルや遅延)
などの情報を見逃すと、ますます待ち時間が長くなったり、最悪の場合フライトに乗り遅れたりしてしまう恐れが。
が、乗り遅れるのを心配して早く行き過ぎるのも問題で、これだけ混雑しているということはレストランやラウンジが満杯なのはもちろん、座る場所もない、トイレも行列、さらにはターミナル内に入ることさえできないことも。
そのため特に子供連れの家族や体力に不安がある人は、早すぎず遅すぎずの時間に行くことが重要です。
預け荷物がなくオンラインチェックインが済んでいればカウンターに並ぶ必要がないので、可能なら手荷物のみにするのもポイント。
待ち時間が通常より長くなることを想定して、スナックやおもちゃ、本、常備薬etc、それぞれ必要な物を準備して空港に向かいましょう。
搭乗日
空港に着いたら、搭乗するフライトの最新状況を確認しましょう。
残念ながらフライト当日のキャンセルや大幅な遅延も多く、スマホを確認せずにウキウキで空港に着いたらキャンセルになってた、という可能性もゼロではありません。
ともかく航空会社によるキャンセルや大幅な遅延の場合は、返金や他のフライトへの変更、あるいは空港内の飲食店などで利用できるクーポンの配布などの措置が受けられるため、もしそのような憂き目にあっても発狂せずに冷静にすべき行動を取りましょう。
最も時間がかかるポイントであるセキュリティチェックでは、基本的に液体物やノートパソコンをバッグから取り出す必要があるため、自分の順番が来る頃にはすぐに取り出せるようにしておきましょう。
空港が大混雑している場合この頃にはすでにぐったりモードかもしれませんが、トレイからの取り忘れで所持品を紛失する人も多いので、しっかりと確認を。
また搭乗券をスマホで保存している場合、肝心の搭乗時にバッテリー切れにならないよう、充電できる時にはなるべくしておくと安心です。
【2023年6月追記】欧州在住の筆者が実施してること
この記事は元々2022年6月に書いたものですが、それから1年の間に筆者は欧州で何十回とフライトを利用しました。
すでに上に書いたようにフライトのキャンセルや遅延、ロストバゲージに遭うかどうかは運による面が多く、「これをすれば100%安全!」というアドバイスは残念ながらできません。
が、少しでもトラブルの可能性を低くするために、筆者自身が心がけていることを追記します:
①利用する時期と時間帯・・・もしフライトを利用する時期と時間帯を自身で選択できるなら、ピークシーズンの7〜8月や年末年始を避けるに越したことはありません。さらに1日の中でも、早朝や夜遅い時間の方が10〜17時頃よりずっと空いている事が多いため、待ち時間が短くて済みます。
②利用するルート・・・パスポートコントロールの手間を省くため、シェンゲン圏内のルートのみをなるべく利用。当然日本から欧州に飛ぶ場合は最低1度はパスポートコントロールが必要な訳ですが、例えばいくつかの国を周遊したい場合は、シェンゲン圏の国(フランス・スペイン・イタリアなどEUのほとんどの国)とシェンゲン圏外の国(イギリス・アイルランド・ブルガリアなど)を行き来するのは避けることをおすすめします。
③ロストバゲージ対策・・・可能な限り手荷物のみにします。預入荷物がある場合にはAirTagを利用。
AirTag公式サイト(iphone利用者):https://www.apple.com/jp/airtag/
Tile公式サイト(iphone以外):https://thetileapp.jp/
こちらの写真は2023年1月上旬にポルトガル南部のファロ→ダブリンに搭乗した際ですが、年末年始+パスポートコントロールがあるシェンゲン圏→シェンゲン圏外へのフライトのため、凄まじい混雑に巻き込まれました(※ファロとその周辺はイギリス人やアイルランド人に非常に人気のある休暇先です)。
もしフライトを利用するタイミングやルートを自分で決められるなら、突然のストライキなどはまだしも、このような混雑は回避できる事が多いはずです。
まとめ
2022年夏、ヨーロッパ各地の空港で拡がる混雑&混乱についての情報まとめでした。
これらの状況は数日で変わることがあり、特にストライキは直前になるまで分からない事が多いので、利用客としては非常に悩ましい状況なのは間違いありません。
それでもフライトを利用する場合は、できる限りの情報収集と準備をして適切な時間に空港に向かうことが大切です。
ともかく、このカオスが少しでも早く落ち着くことを願います。