地中海のミニ国家マルタは、特に夏のビーチリゾートとして欧州では定番の人気を誇ります。
そんなマルタは2021年7月にワクチン接種者以外に原則14日の隔離を課すことを突如発表し、密かに話題になりました。
この記事ではワクチン接種をしたオランダ在住の筆者が、実際にマルタに渡航した際の経験や情報をまとめました。【2021年10月情報】
渡航時のマルタの状況や規制は?
今回オランダ在住の筆者は、2021年10月に3泊4日のあっさりした日程でマルタを訪れました。
元々マルタは好きな国だったんですが、2021年7月に『ワクチン接種者以外は14日の強制隔離』という発表&施行をマルタ政府が突然行なった時、ワクチン打ったら記念にマルタ行こうと決めていました。
その時点ではまだワクチンを接種していませんでしたが、8月に2度目の接種を終え、9月はすでに別のバカンスに行ったので、10月に行くことに。
それではこの2021年10月中旬頃のマルタは、どのような状況だったのでしょうか?
まずはコロナの日々の新規陽性者数&死者数を、Worldometers.infoのデータで確認してみましょう。
本格的な観光シーズンの始まりでもある7月上旬に陽性者が急拡大したものの、その直後にマルタ入国にワクチン接種を求めることを決定・施行した甲斐もあってか、その後は順調に減少&安定している事が伺えますね。
一方で死者数ですが、人口50万人にも満たないミニ国家のため元々の数が少なく、陽性者の数ほどハッキリと増減してはいませんが、こちらも安定傾向であると言って良いのではないでしょうか。
そしてマルタの規制ですが、ちょうど筆者が渡航中の2021年10月9日に変更がありました。
全てを記載するとそれだけで記事が埋まってしまうので、観光客目線で重要なポイントをまとめるとこのようになります。
(参照:マルタ観光局、マルタ保健省、Times of Malta)
マルタの主な規制(2021年10月10日時点)
- 『レッドゾーン』の国からの渡航者は有効なワクチン接種証明書があれば隔離なしで入国可能(※日本も2021年10月時点でレッドゾーンに入っており、同月下旬に日本のワクチン接種証明書も利用可になりました)
- 有効なワクチン接種証明書を所持していない場合は自己負担で14日間の隔離
- 『ダークレッドゾーン』の国からの渡航は原則禁止
- 特定の飲食店やナイトクラブの入店/入場にワクチン接種証明書が必要(※店舗側が証明書をゲストに求めるか選択可能)
- 公共交通機関や屋内でのマスク着用義務
最大のポイントはワクチン接種者以外に14日間の隔離を設けている点で、ワクチン未接種者はよほどの理由がなければ普通の旅行で行くのは諦めざるを得ないでしょう。(※妊婦や健康上の理由で接種できない人は所定の条件で隔離免除)
そして2021年10月9日から始まった規制で、飲食店やナイトクラブのオーナーが、ゲストに対しワクチン接種証明を求めることが可能になりました。
このワクチン接種者のみを受け入れる店舗は営業時間の拡大やソーシャルディスタンスの短縮、さらに流す音楽のボリュームを上げられるなど、細かい特典が与えられるそう。
逆に言うとワクチン接種者以外も受け入れる場合は店舗側により多くの規制が必要ということになり、マルタ国内で大きな議論を呼んでいるようです。
マルタ旅行レポート①渡航前の準備
それでは実際に筆者がマルタ旅行の前に行なった準備を解説していきます。
通常のパスポートやら歯ブラシやら300円分のおやつやらに加えて、マルタ渡航に必要なのは2点です:
-ワクチン接種証明書・・・マルタ政府が指定する証明書。筆者はEUデジタルCOVIDワクチン証明書(EU Digital COVID vaccination certificate)を利用。
EU各国ではそれぞれの国で独自の名称のアプリを使い、ワクチン接種証明・回復証明・陰性証明のいずれかをQRコード&画面で管理・提示できるようになっています。
筆者が住むオランダでは “CoronaCheck”というアプリで、このアプリはEU各国はもちろんトルコやアルバニアなどいかにもEUの仲間に入りたそうな国々、さらにはワクチンパスポートの先駆者イスラエル、さらにさらに運河どころか大西洋を飛び越えてなぜかパナマなど、中東から中米まで数十カ国で利用可能。
利用する場面や国によって、QRコードを読み取るか人の目で情報を確認するかは異なるようです。
-Passenger Locator Form (PLF)・・・出発前に搭乗便や滞在先の住所などをオンラインで登録、入国時にデジタルor紙でフォームを提示。
このフォームは海を挟んだ隣国イタリアと同様ですが、イタリア版と異なりマルタ版はワクチン接種証明書をアップロードする必要がありました。
一応マルタも14日の強制隔離を受け入れるならワクチン未接種でも渡航できるはずなので、『ワクチンを接種したか?』の質問にNoと答えたらアップロードせずに完了できたのでは、と思われます。
こちらのフォームに必要な情報を全て入力し送信すると、間もなくQRコードなどが記載された完了メールが届くので、それを入国時に提示する形になります。
ワクチン接種証明書、フォームはいずれもプリントする必要はなく、スマホで提示すればOK。
これに加えて筆者はフランス経由で、しかもできれば空港から出たいわね、と寄り道する気満々だったのでフランス入国に必要とされる誓約書(Engagement sur l’honneur)も用意。
この誓約書はフランス内務省のホームページから英語orフランス語でダウンロードでき、過去48時間以内にコロナらしき症状がなかったことなどを誓う内容となっています。
こちらはサインが必要なため、念のためプリントして用意しました。
以上の準備を終え、出発の日を迎えます。
マルタ旅行レポート②マルタ入国
今回筆者は庶民の恋人Ryanairを利用し、フランス・マルセイユ経由でマルタに行くことに。
搭乗前にCoronaCheckでワクチン接種証明書をチェックされ、同時に最終目的地がマルタでマルセイユは経由だと伝えた上で誓約書も提示しました。
この2021年10月時点でEUのワクチン接種証明書の運用が開始して3ヶ月以上が経過していることもあってか、さすがに大きな混乱はなく、各自がスマホまたはプリントした証明書・搭乗券・パスポートorIDの3点セットを手に、粛々と搭乗手続きを進めていきます。
ほぼ予定時刻通りに出発&到着すると、マルセイユ空港でパスポートチェックがありました。
EU内の移動なのにパスポートチェックがあるのは意外だったのですが、確認したのはパスポートのみで、ワクチン接種証明書や誓約書、念のため差し出したオランダの滞在許可証には目もくれず&何も聞かれず無事通過。
この日の乗り継ぎ時間は約4時間と非常に中途半端だったため、約1時間かかるマルセイユ中心部までの移動は諦め、空港からすぐのベール湖付近を散策するのみに。
きれいな水を見るとすぐ飛び込んで泳ぎたくなる体質の筆者ですが、10月の午前中のマルセイユは泳ぐには少し勇気と根性が要る気候。
根性なしの筆者は無理せず周辺の散策や読書をするだけで我慢し、マルタ行きのフライトの約2時間前に空港に戻ります。
この日は週末だったこともあってかマルセイユ空港はかなりの人で賑わっており、全ての人がマスクをしている点以外は、コロナ前と何ら変わらぬ空港ならではの独特な高揚感を感じさせてくれました。
マルタ行きのフライト前にも同様にワクチン接種証明書・搭乗券・パスポートの3点セットを提示し、いざ地中海リゾートへ。
マルタに着くといよいよドキドキワクワクの入国手続きが待っているわけですが、筆者が利用したマルセイユ→マルタ以外にも近い時間帯に2本到着便があったせいか、マルタ空港はさらなる大混雑。
ここでワクチン接種証明書とフォームを確認されるのですが、窓口の数もかなり多く、数百人の大行列の割には待ち時間は少なく感じました。
たまたま筆者の前に並んでいた渡航者に不備があったのか1人で5分以上かかっていたので、これは渡航の目的やら好きなマルタ料理やらスリーサイズやら色々根掘り葉掘り聞かれるパターンか・・・と覚悟していましたが、筆者の確認は1分未満で余裕で終了。
ワクチン接種証明書&フォームはQRコード、それに加えパスポートとオランダの滞在許可証を確認し、何の質問もされませんでした。
空港到着から手続きが終わって自由の身になるまでの時間は約45分、個人的には事前の予想の範囲内といった感じでした。
マルタ旅行レポート③マルタ観光
2019年10月との比較
筆者はコロナ前の2019年10月、今回と全く同じ時期にマルタを訪れていました。
そのため長引くコロナ禍、そして実質ワクチン接種済みの観光客のみ受け入れという状況の中、2年前の同時期と比較してどれぐらい観光客の数や街の雰囲気に違いがあるかどうかも、密かに興味があったのです。
結論から言うと、パッと訪れただけでハッキリと分かる程の違いは少なく、一定の場所でのマスク着用が必要な点以外は街全体の雰囲気や活気は2年前とあまり変わらないように感じました。
もちろん具体的にデータを収集すれば入国者数や各観光スポットの入場者数、さらには飲食店の売上などがコロナ前より減少していることが予想されますが、率直な第一印象としては街もビーチも各店舗も、観光のピークシーズンが過ぎた10月としては充分賑わっていたかと。
そしてマルタでは2021年10月9日以降、一部の飲食店やナイトクラブの入場にワクチン接種証明書が必要になりましたが、そもそも入国時に同証明書がないと14日隔離される訳ですから、国外からの旅行者で有効なワクチン接種証明書を持っていない人は極めて少ないはずです。
そのためこの規制もワクチン未接種の地元民はともかく、旅行者にはネガティブな影響はあまりなかったのでは、と個人的には思います。
マスク着用と異なりワクチン接種は目で見て分かるものではないので、良いか悪いかはさておき繁華街に行けばコロナを忘れさせる“普通”の喧騒がそこにありました。
サッカーW杯予選観戦
筆者が旅行中の10月8日、ちょうどマルタで2022年カタールW杯の欧州予選の試合が行われると知って、せっかくなので観に行くことに。
しかし時代はコロナ真っ只中、試合開始10分前にスタジアムに行ってその場でチケットを購入できるほど容易ではありません。
筆者が観戦したのはマルタ×スロベニアという両チーム合わせてもオブラクしかメジャーな選手がいない、文句なしのマイナーな試合。
そんなどうでもいい試合を観るために、このような手順が必要でした:
①チケット購入のためにマルタサッカー協会に無料登録
②チケット購入
③有効なワクチン接種証明書をアップロード
④承認されたらチケットをダウンロードorプリント
⑤試合観戦
2021年10月時点で、サッカー観戦やイベント入場時にワクチン接種証明や陰性検査を入場前に求めるのは欧州では一般的になりつつあります。
実際に筆者が9月にベルギーで同じくW杯予選を観戦した時もそうでした。
しかしマルタの場合はチケット購入→オンラインで証明書を提出→承認されたらチケットが手に入るという、事前に確認する方式。
まあ確認するタイミングが違うだけと言えばその通りですが、たかだかチケット価格€10のどうでもいいどうでもいい試合のためにずいぶんと手間をかけさせるな、と正直思ったものです。
ただしこの事前の確認&承認があったおかげでスタジアム入場時にはチケットの確認のみでワクチン接種証明書の再確認はなく、迅速に入場できました。
これは観衆が数千人程度だから可能な方式で、数万人となると事前に一人一人から送信される証明書をチェックして承認or不承認の返信をして・・・というのは現実的でない気がしますが、実際に入場時のスタッフ⇔ファンの接触時間を短縮できていたのはメリットだと感じました。
そんな面倒な一通りの準備を済ませて満を持して観戦した試合は、オブラクというワクチン並みの防御力を誇るスロベニアが4-0でマルタさんをボコボコにする、情け容赦ない結果に。
元から誰も期待していない(失礼)マルタのW杯参戦は、儚く散ることとなりました。無念。
マルタ旅行をしてみた感想
筆者としてはコロナ前の2019年の同時期以来のマルタ旅行でしたが、その時と比べてもほぼ同じように楽しむことができました。
マルタが2021年7月に有効なワクチン接種証明書を持たない渡航者に14日の隔離を課すと突如発表した直後は大きな混乱や批判があったと思われますが、10月にもなればさすがに各自が必要な下調べや準備をして渡航しているでしょう。
このEU随一の厳しい入国規制は、人口50万人に満たないミニ国家でありながら観光大国でもあるマルタが、観光客をなるべく確保しつつ市民の命を守る苦肉の策だったのかな、と個人的には理解しています。
マルタにはリタイア組の渡航者も多く、仮にワクチン未接種の高齢の観光客が何十万何百万と訪れれば、コロナ感染→病床を占領という事態になりかねません。
若い世代は統計的には重症化しにくいとは言え持病があったり肥満だったりすればそのリスクは上がる訳で、じゃあ渡航者一人一人の持病の有無やBMIを事前にチェックしてワクチン接種の必要or不要を決定・・・なんてやってたら途方も無い手間がかかるでしょう。
妊婦など一部の例外を除いて全世代でワクチン接種が求められるのは不条理だという意見があるのは極めて当然ですが、マルタ側からするとそれによりいくらかの渡航者の数が減っても市民の安全には変えられない、といったところではないでしょうか。
ひとまず10月が過ぎるとオフシーズンモードに入り、観光客がぐっと減っていくので、今後マルタのコロナの状況がどうなるか?それにより規制を緩和or強化するか??引き続き注視していきたいと思います。