【在住者の本音】家不足、物価高騰…オランダ移住は『罠』なのか?

オランダ
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世界でも稀に見るフリーランスビザの取りやすさから、海外移住を目指す日本人に俄然注目されているオランダ。
しかしその一方で深刻な住宅不足や急激な物価高騰など、住みにくさを指摘する声も。
この記事ではオランダ在住の筆者が、リアルな本音を綴ります。

『オランダ移住は簡単』は本当かウソか?

資本金€4500でフリーランスビザ(※)取得&移住が可能という、超異例の優遇策を日本人に与えているオランダさん。(※個人事業主ビザ・起業家ビザとも呼ばれる。以下、フリーランスビザで統一)

そのため海外移住に興味を持つ日本人にしばしば熱い視線を注がれる訳ですが、移住者が増えれば情報量も増え、それに比例してネット上ではオランダ移住についての良い話も悪い話も溢れるように。

筆者は以前、オランダ移住に関してよく取り上げられる噂についての記事を書きました。

この記事でも書いたように、オランダ在住の日本人は約10000人とされ、その10000人がそれぞれ異なる意見や価値観を持ち、異なる時期にオランダに渡航し、異なる生活を送っている訳ですから、誰かひとりの在住者の情報を鵜呑みにするのは賢明ではないでしょう。

それでもこれからオランダ移住を目指す人が在住者のリアルな声を聞きたい、現地の最新情報を知りたいと思うのは自然なことだと思うので、筆者もあくまでもその約10000分の1の立場として、ありのままの情報を提供したいと思っています。

結論から書くと、フリーランスとして海外移住を希望する人にとってはオランダ移住は比較的簡単だというのが、筆者の考え。

ここでポイントなのは、『フリーランスとして』(=他の目的ではなく)ということ、『比較的』(=他国と比べると)ということ。

例えばワーホリが可能な年代だったり、貯蓄がしっかりとあり退職後の移住先を探したりしているのであれば他にも候補先は多数ありますし、また『簡単』といっても財布とパスポートだけでビザが取れる訳ではもちろんありません。

そしてこの後にも書きますが、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を機にインフレ率が過去最高を記録するなど凄まじい物価高騰により、オランダ生活のハードルが上がっているのは事実だと感じます。

また筆者がオランダに移住したのは2016年ですが、その頃より住宅不足が深刻化し、家探しもより困難になっています。

首都アムステルダムでの家探しは特に困難 photo by Maki

つまりフリーランスビザ取得の条件そのものは変わっておらず、その条件は今も世界でトップクラスの簡単さだと思いますが、元々高かった物価がさらに急上昇&家探しの難易度が上がっていることで、『誰でも簡単に』オランダに移住できるかというと、そうでもなくなってきているかな、と。

なぜならオランダのフリーランスビザを取得するためにはまず住民登録が可能な住居と契約する必要があり、家が見つからない=ビザが取得できないからです。

そしてビザを取得しても、物価が全般的に上がっているので、当然ながらそれを支える収入を得られないことには生活を続けるのは厳しくなっていきます。

それでは、もう少しこの内情を詳しく見ていってみましょう。

2016年に移住した筆者が感じるオランダ移住の『今』

筆者は2016年にこのフリーランスビザを取得し、オランダに移住しました。

このブログは基本的に鼻をほじりながら気軽に書きたいというぬるい思いで鼻をほじりながら始めたので(ほじりすぎ)、筆者自身の細かい生い立ちやら生年月日やらホクロの数やらは非公開にしておきますが、ごく基本的なプロフィールはこのようになります:

  • 子供がいないシングルの30代女性
  • オランダの大都市在住(2016年以来ずっと同じ都市在住)
  • フリーランスとして生計を立てている
  • オランダ以前に2カ国居住経験あり

なぜこれをあえて書くかというと、フリーランスとしてオランダ移住を計画する人が情報収集をしたければ、その目的や家族構成に近い人の情報でなければあまり参考にならない可能性があるからです。

例えばですが、オランダ在住者のフェイスブックやインスタグラムでいわゆるキラキラ系の投稿を見ると「うわあ素敵、私も住んでみたい!😍」と胸をときめかせるかもしれませんが、

「今日は話題のおしゃれカフェでアフタヌーンティー❤」(親の仕送りで)

「今ギリシャのリゾートでバカンス中です!😘」(ダーリンが全部払いました、うふふ)

・・・という可能性もありますよね。

これはそういう人を揶揄したり皮肉ったりする意味では一切なく、要はフリーランスとしてオランダに移住したい人は留学生や駐在員や現地人パートナーがいる人の情報ではなく、同じフリーランスの在住者の情報の方がニーズに近いはずです。

自慢することでもなんでもありませんが、一応筆者は2016年にオランダに移住して以来、自分の生計はずっと自分で立ててきたので、同じ目的でオランダ移住を考えている人の参考に多少はなるかもしれません。

しかし一方で自分ひとりで移住して自分ひとりのみの生計を立てるのと、家族で移住して家族全員の生計を立てるのでは費用も責任の重さも全く違うので、その点はご注意を。

ギリシャには(自腹で)行くけど5つ星リゾートには泊まりません photo by Maki

そして、これもドヤって書くことではありませんが、筆者はビジネスでバリバリ成功している勝ち組エリート・・・では全くなく、普通の庶民です。

コロナの際には収入がゼロになった時期もあり、また2022年の物価急騰の影響ももちろんバッチリ受け、これからどうなるやらと戦々恐々としつつ、とりあえず今のところはホームレスにならずに生きています。

そして、これは筆者がいちいち書くまでもない周知の事実ではありますが、この2020年からのコロナ禍と2022年のウクライナ侵攻によるインフレは何百年先も語られるであろう歴史的な出来事であり、オランダでも生活を激変させられた&させられている&させられるであろう人がどれだけいるか、想像もできません。

これは日本人でもオランダ人でもその他の国籍の移民でも同様で、それまで順調だったビジネスが潰れた、赤字に転じた、事業内容を変更した、引っ越しを余儀なくされた(母国への帰国も含む)etc,この歴史的な荒波に次々と襲われる中、文字通りの生き残りを賭けた日々を送っている中小企業やフリーランサーは少なくないでしょう。

もっとも、コロナ禍や10数%のインフレごときではびくともしない富裕層が一定数いるのも事実で、生活に困窮する人が多数いる一方で、今まで通り何の節約をすることもなく外食やショッピング、旅行を謳歌する人もいます。

そのためビジネスの内容やターゲットによっては、現在の多難な時でも売上が落ちるどころか上げられる可能性も。

数年前より家賃・光熱費・ガソリン代・食費の何もかもが値上がりしているので、それなりの覚悟や計画、資金は必要ですが、フリーランスとして海外に定住したいなら、今でもオランダは非常に魅力的な国だと個人的には思っています。

【自己分析】筆者が今までオランダで生存できている理由

2020年3月・すっからかんのスーパーの棚 photo by Maki

未来はどうなるかわかりませんが、とりあえず筆者が2016年から現在まで、コロナ禍やウクライナ侵攻の影響をガッツリ受けつつオランダで生き残れている理由は何か?と自己分析してみると、並外れたスキルがあるとか元々貯蓄がたっぷりあったとかでは一切ないのは明白です。

やや抽象的ですが、こんなポイントだと考えています:

・元々の期待値が低かった・・・筆者はヨーロッパ移住が初めてではなく、またオランダの前は別の第三国に住んでいました。
2016年当時、SNSは全く利用しておらず、ネットでオランダ移住について検索しても情報量がとにかく少なかったため、過度な期待も憧れもなく移住しました
今でもキラキラ生活とは無縁の日々ですが、そもそもそれを期待していなかったので、特に失望もしていません。

・こだわりや物欲が少ない・・・例えば食べ物やスキンケアグッズ、ファッション、住居etc.にこだわりがあると、必然的に生活費が上がったり、欲しい物・必要な物が手に入りにくいことにストレスを感じやすかったりしますが、筆者は何も気にしません。
主食が米でも小麦でもイモでもトウモロコシでも問題ないほどなので、日々の生活が質素でも「我慢してる」という感覚がほとんどないのは強みかもしれません。

・すでにフリーランスの経験があった・・・フリーランスは毎日満員電車に乗らなくていい、ウザい上司がいない、自由気ままetc.というメリットの一方で、毎月の収入が安定しない、有給もない、同僚がいなく孤独になりがちetc.というデメリットもあります。
コロナのような事態はさすがに未経験でしたが、そういったデメリットをすでに心得ていたので、月によって多少収入が上下したからと言っていちいち不安になることはありません。

・失敗することをあまり恐れていない・・・オランダでダメなら帰国するなり別の国に行くなりすればいいや、と軽い気持ちで始めたオランダ生活。
今もその気持は同じで、人生に失敗や回り道はつきものだと考えています。

在住者の情報は全て信頼できる?

全然キラキラしてない筆者が無理やりキラキラっぽい写真を撮ってみた inマルタ photo by Maki

そして現在、フェイスブック・インスタグラム・X(旧ツイッター)・You Tubeなどはますます人々の生活に欠かせないものとなり、誰もがその時その時の経験や感情、情報を瞬時にシェアし、世界のどこにいてもそれらをチェックできるようになっています。

それ以外にもブログや情報サイトを通してオランダ生活についての情報を発信する人も増え、数年前とは比べ物にならないほど多くの情報を得られるように。

それは非常に便利なことではありますが、特にSNSのような言ってしまえばどこの誰かも分からない人が匿名で発している情報を簡単に信用して良いのか?と思うことはないでしょうか?

筆者自身は今もSNSはあまり使わず、またこの鼻をほじりながら書いている(もういいって)やる気のないブログも、なるべく中立的かつありのままの事実を書くように心がけてはいます。

しかし中には、自身のメリットのためにオランダ生活を良くor悪く見せて情報を発信する人がいる可能性もあるのではないかと思います。

良く見せる例として、

・日本人移住者をターゲットにしたビジネスをしている(→移住サポート、日本人向けの飲食店や物販など)
・オランダに友達や仲間が欲しい

これらの人は、自身がビジネスで成功したり、あるいは孤独を解消したりしたいがためにオランダの良い面を見せて惹き付けようとしている可能性が。

逆にオランダをディスったりする例として、

・同業者が増えてほしくない
・『バズり』目的
・本当にうまくいっていない人が、憂さ晴らしに

筆者は当然このしょぼいブログでご飯を食べているわけではないのですが、“オランダ移住のメリット”“オランダ移住のデメリット”という記事では、デメリットについての記事の方が圧倒的に閲覧数が多いです(書いた時期が早い点を考慮しても)。

もし『オランダ生活、何もかもが順風満帆です!』『オランダ生活がヤバすぎた!その実態とは・・・』というタイトルのブログなりYou Tubeなりがあったとしたら、間違いなく後者の方がアクセス数が増えるでしょう。

なので情報発信で収入を得ている人や単に承認欲求が強い人は、アクセス数やいいね稼ぎのために、完全なウソとまでは言いませんが、誇張して表現していることもあるかもしれません。

ちなみに2022年以降ガス代やガソリン代を始めとした物価が高騰しているのは紛れもない事実ですが、筆者は光熱費込みの物件に住んでいることや元々車を利用していないこと、さらにシングルで大食漢でもないことから、今のところ壊滅的な影響は受けていません。

同様のオランダ在住者は多く、みんながみんな阿鼻叫喚状態という訳では全くありません

その典型的な例がこちらのニュースです。(オランダ語)

Al voor de energiecompensatie is uitgekeerd, wordt het geld gedoneerd
Er is een groep mensen die geen behoefte heeft aan de energietoeslag en die toeslag graag wil schenken aan mensen die he...

この急激な光熱費の値上げに対して政府が€190の補助金を2回支払うことを発表したのですが、そんな補助金は不要!という人達が受け取る前からすでにフードバンクなどの団体に同額を寄付しているのだとか。

オランダに限らず、普通に生活していたら良い瞬間も悪い瞬間もあるのが人生ではないでしょうか。

もしオランダ移住や生活について過剰に良い面あるいは悪い面ばかりを強調している情報があれば、何か裏がないか少し疑ってみても良いと思います。

【悲報】日本人が日本人に詐欺をしてると大使館から注意喚起

・・・そんなことを書いていたら、在オランダ日本国大使館から日本人が日本人を相手にした詐欺が発生している、との注意喚起メールが。。。(2024年5月)

はい、ということで残念ながらSNSであれブログであれ掲示板であれ、『日本人だから信頼できる』という感覚は捨てた方がいいでしょう。

無料かつ匿名で閲覧・利用できる範囲なら情報収集のために積極的に活用していいと思いますが、お金の支払い(デポジット・契約料・利用料など)や身分証明書の提示が求められる場合は、念には念を入れて怪しいポイントはないかをしっかり確認するように!

ただしこの件のみを取り上げて『オランダ在住の日本人は詐欺師や悪者ばかり』みたいな印象も持ってほしくはありません。

現実的に詐欺師は世界中のどこにもいて、日本でもオレオレ詐欺を始めとして毎日どこかで詐欺が行われ被害者が出ているはずですが、件数が多すぎる事件はいちいちニュースにもならないでしょう。

その一方でオランダの住宅難につけ込んだ詐欺が蔓延っている(加害者・被害者とも国籍問わず)のも事実であるため、特に住居契約の際は、相手の国籍に関係なく慎重にやり取りをすべきなのは間違いありません。

【続・悲報】オランダ到着数日後に『移住サポートします!』

上記の詐欺まではいきませんが、オランダに到着して数日後にもうオランダ移住サポートの宣伝をSNSで投稿している人もいるようです。

いくら簡単と言ってもビザが数日で取得できる訳はないので、自分自身のビザがまだ取得できていないのにもう新たな日本人移住者相手のサポートを有償で始めているということ。

冷静に考えて、オランダに数日前に到着しました、オランダ語が話せる訳ではありません、オランダ人のパートナーや知人がいる訳でもありません・・・という人にお金を払って『移住サポート』を依頼するのは極めて無駄な行動ではないでしょうか。

フリーランスビザでオランダ移住する人でオランダ語が初めから話せる人は少ないため、一番手っ取り早い顧客は日本人になりがちです。

さらにこれからオランダに移住しようとする人は現地の情報に疎く、格好のターゲットになりやすいと言えるでしょう。

幸いオランダ移住に関する有益な情報を無償で提供している在住者もいるので(筆者は無益な情報専門ですが・・・)、有償で中身の薄い情報やサポートに手を出す前に、まずは自分自身でじっくり情報収集することを強くおすすめします。

オランダで詐欺や怪しい移住サービスに遭わないためには?

移住先として人気の街の一つ・ユトレヒト photo by Maki

ではこうした詐欺やうさん臭い移住サポートを謳うサービス業者でお金を失わないためには、どうしたらいいのでしょうか?

ごく一般的なアドバイスではありますが、以下のような点が挙げられます;

①現地の家賃相場を知る

特に家不足が深刻となっている現在、一軒家・アパート・シェアルームなどを問わず賃貸物件の相場は上がり続けており、もしその都市の他の物件より遥かに安い物件が掲載されていたら、それはほぼ詐欺物件といって間違いないでしょう

オランダでも都市によって家賃には差があるため、 あくまでも同じ都市の似たような物件で価格を比較&チェックすることが重要です。

仮に極端に安い訳ではなくでも、何週間・何ヶ月も入居者を募集し続けているような物件もまず疑った方がいいでしょう。

1軒の物件に数十人あるいは数百人が即座に申し込むことも珍しくないオランダでは、長い間入居者が決まらない賃貸物件なんてほぼないからです。

②語学力をつける

もしあなたが日本語しかできなくて英語もオランダ語も全くできないとしたら、自然と日本人や日本語の情報に頼りがちになります。

現地の物件サイトを始め、インターネットであらゆるオランダのサイトを閲覧する場合は自動翻訳を使えばいいですが、オランダ語→日本語の翻訳精度はオランダ語→英語よりかなり低いのが一般的

さらに物件の内覧の際、オランダ人を含め何十人と希望者がいる中で、オランダ語はおろか英語もまともに理解していない人に物件を貸そうというオーナーは多くはないでしょう

いきなりオランダ語というのは難しくても、最低ある程度の英語は習得しておくのがベスト。

そして日本語の情報に頼らなくていいのであれば手に入れられる情報量も格段に増えるので、素人が謳うような移住サポートに手を借りる必要性もずっと下がるはずです。

③GoogleやX(旧ツイッター)でレビューをチェックする

もし特定の不動産会社や移住サポートを利用するのであれば、レビューをチェックすることも重要です。

複数のレビューに具体的な問題点やネガティブな経験談が書かれていたら、警戒した方がいいかもしれません。

またオランダでビジネスを行う場合、どんな職種であれ商工会議所に登録が必要で、登録の際に『KVK number』を与えられます。

参照サイト:https://www.kvk.nl/en/starting/kvk-number-all-you-need-to-know/

このKVK numberはウェブサイトに明記することが義務付けられているため、もし利用する会社や業者のサイトにこのKVK numberが記載されていなければ、そもそもその会社が違法で営業している可能性が高くなります

オランダで最も有名な物件サイトの一つ・Parariusのウェブサイトより

そのような会社・業者も、避けるべきなのは言うまでもありません。

④ひとりで決定を下す前に人に相談する

特に家探しの際は、時間が勝負の場合も多いため、1秒でも早く返信・決断・契約したい!と思う人は多いはず。

それは間違っていませんし、実際にモタモタしてたら他の人に決まってしまう可能性もあるので無駄に時間をかける必要はありませんが、焦っている・急いでいる時こそ冷静な判断を失いがちでもあります。

そのためもしあなたがひとりで移住し、自分ひとり用の物件を探しているとしても、可能な限り家族や友人と協力しながら慎重かつ迅速に進めるのが理想です。

『今』オランダ移住するのはリスク?

2022年3月・アムステルダムでのサッカーの試合前に掲げられたウクライナ国旗 photo by Maki

ではこのコロナ禍に続きウクライナ侵攻という、激動の時代の真っ只中にある2022年から23年にオランダに移住するのはリスキーなのでしょうか?

筆者は当然ながら占い師でも経済学者でもないため、この先の不透明な情勢・状況がどうなっていくのか断言することはできません。

しかし、自分自身の過去の経験も考慮すると、オランダ移住を早めにすることと遅めにすることには、それぞれメリット&デメリットがあると考えています。

あくまでも個人的な見解ですが、以下の通りです。

『今』移住するメリット&デメリット

オランダ移住に限った話ではなく、どんなことでもできるタイミングですぐに行なうというのは非常に大切だと思います。

2020〜2021年には突然勃発したコロナにより、欧州各地で国境封鎖や都市封鎖、夜間外出禁止令など、映画の中の世界のような非現実的なことが次々と起こりました。

そしてコロナがようやく終焉に向かっていた頃、世界一の国土を持つロシアが隣国ウクライナに侵攻

さらに欧州全体で移民問題が顕著になる中、オランダでも2023年には『反移民』を掲げる政党が勝利するなど、移民法がいつどのように変わるかも予測するのは困難です。
つまり『今』できることが来月や来年できるかどうかは、誰も保証できません。

一方で物価高騰が顕著な今、充分な貯蓄がないまま渡蘭したら、最初のステップである家探しでいきなり躓くリスクがあります。

『あとで』移住するメリット&デメリット

コロナ禍で渡航規制や国内規制が目まぐるしく更新・変更になったのと同様に、2022年のウクライナ侵攻以降、毎月インフレ率が上昇したり円安が加速したりと、日々状況が変わっています。

SNSなどで現地のリアルな状況を発信する在住者がいれば、慎重に最新の情報収集をしながら自分にとって最適の時期に渡航するのも良いでしょう。

デメリットとしては、先に書いたように渡航制限や移民法の変更などで突然状況が変わり、扉が閉ざされる可能性もゼロではないこと。

そして、もし今後も円安が続けば、日本円で貯金して渡航しようとしている人にはどんどん不利になっていきます。

筆者が2016年に移住した時の状況

もはや大昔のことなので参考にならないかもしれませんが、一応筆者自身がオランダに移住した時の情報も簡単にシェアします。

移民法の変更により日本人のオランダ移住が一気に容易になったのが2014年12月で、筆者は2016年1月に偶然ネットでその情報を知りました。

その際は興味は持ったもののすぐに移住とは考えていなかったのですが、2016年6月末に再度移民法が同年10月から変わるとのニュースが。

当初のビザでは、フリーランスとしての活動も就労しての仕事もOKだったのが、2016年10月以降にビザを取得するとフリーランスのみOKで就労はNGになる、と。

このニュースを見て約1週間後に片道航空券を予約し、2016年8月上旬にオランダに到着しました。

家族も知り合いもひとりもいなかったのでairbnbに滞在しつつ、到着から約2週間後に住居を契約し、約2ヶ月で無事にビザは取得できたものの、予定より遥かに早く物価の高いオランダに来たことで、数カ月後にはほぼ貯金がゼロに。

それでもパートの仕事を見つけて乗り切り、今に至っています。

つまり、筆者自身も突然の移民法の変更という出来事のために当初の思惑より早く渡航し、その結果充分な貯金ができなかったというデメリットと、変更前に渡航したおかげで就労も可能だったというメリットを経験したわけですね。

なおこの就労可能という条件は2018年にビザ更新した際に失われたため、現在はフリーランスとしてのみ働けるようになっています。

オランダ移住が向いているのはこんな人?!

東京駅のモデルにもなったことで有名なアムステルダム中央駅 photo by Maki

それではオランダ生活のハードルが上がっている今、どんな人がオランダ移住に向いているのでしょうか?

繰り返しのようになりますが、筆者自身は日本人移住者が増えようが減ろうが特に損も得もしないので、

「移住したければすればええよ(鼻ほじ)」
「移住したくなければしなければええよ(鼻ほじ)」

で完結なのですが、せっかくならこの記事を読んでくれている人に少しでも役に立てた方が嬉しいので、それっぽい考察を加えたいと思います。

海外でフリーランスとして定住して生活したい・・・例えばパソコンひとつでできる仕事がある人は、インターネットさえあれば世界のどこでも働けます。
パソコンを片手にあちこち旅をしたり、物価の安い国でのんびりしたり。
しかし『フリーランスとして定住』するには世界のどこの国でも特定のビザが必要なのが常識で、オランダよりずっと条件が厳しいこともあります。

家探しにかける費用・時間・エネルギーを自己投資と思える・・・中にはあっさり家が見つかる場合もありますが、時に1ヶ月2ヶ月とかかることもある、オランダの住宅事情。
見つかるまでairbnbやホテルに仮住まいする場合はそのコスト、何十件と問い合わせをしても返事すら来ない、あちこち内覧に行く手間etc..日本では考えられない程のあらゆる困難や苦労を、プラスに思えるかどうかは大きなポイントです。

経済的に余裕がある・・・全体的な物価の上昇は言わずもがな。そして住居を探す際、1軒の物件に何十人と希望者が来ることも珍しくない今、経済的に証明できるものがないと契約にこぎつけるのは極めて困難でしょう。
一般的にオランダでは家賃の3〜4倍の収入証明を契約条件としている賃貸物件が多いです。
(↓物件サイトの例)

https://www.funda.nl/huur/ (オランダ語)
https://www.pararius.com/english (英語)

オランダまたはヨーロッパでやりたい事・住みたい動機が明確にある・・・もし漠然と海外に住みたいだけなら、よりハードルが低い国は他にもあります
オランダ人も悩まされる程の物価の高さや住宅事情の厳しさが現実となっている今、曖昧な気持ちで移住しても道は険しいかもしれません。

うまく行かなかった場合のプランを考えてある・・・始める前から失敗することを考えるなんて!と思うかもしれませんが、家が見つからなければ期限内にシェンゲン圏外に出国する必要があり、ビザが取れても貯金がなくなれば生活はできなくなります。
もしオーバーステイすると、オランダを含むシェンゲン圏に再入国ができないなどの罰則が課せられる恐れも。
仮に一度渡航してうまく行かなくても、その経験から色々と学んだり、移民法が変わっていなければ貯金をして再チャレンジしたりもできるので、プランBやCを用意して柔軟に対応しましょう。

逆にオランダ移住に向いていないのは?

安くてごはんがおいしくて暖かいタイも人気の移住先 photo by Maki

上に書いたことの反対のタイプの人は、向いていないと断言はもちろんしませんが、慎重に考えた方が良いかもしれません。

例えば、普通の旅行の際にホテルやairbnbを探す際は、ここは場所がイマイチ、もっと眺めが良い所が良い、値段は○○くらい、設備がしょぼいからダメetc.完全に自分が選ぶ側で、何十何百の宿泊施設の中から好きな所を自由に選択できますよね。

しかしオランダの家探しは数々の希望者の中からオーナーに選んでもらうという全く逆の立場で、注文をあれこれつけていたらまず家は見つからないでしょう。

世界最強とも言われる日本のパスポートでは世界の数多くの国にビザなしで容易に渡航でき、物価が安い国であればオランダより遥かに安いコストで一定期間滞在できます。

出入国規定が緩い国なら、ビザ期限ギリギリまで滞在→一度国外に数日脱出→再入国してそこからまた滞在することも可能ですし、半ば移住したような感覚になれるでしょう。

『定住』『フリーランス』といった条件にこだわっていないのなら、何もかもが高いオランダでairbnbなどに延々と滞在し、悪戦苦闘しながら家探しをすることのモチベーションを保つのが難しくなる可能性はあると思います。

【おまけ】海外移住の現実とは?

旅行するだけならどこでもよく見えるもの(スペイン・カナリア諸島) photo by Maki

最後におまけとして、当たり前のことながら時に当たり前と思われない点を書いておきます。

それはオランダのみならず、世界に欠点やマイナス点が1つもない理想郷のような国はどこにもないということ。

例えばオランダ移住の最大のハードルと言っていい物価の高さ&家探しの難しさは他の国なら全く問題ないこともあるでしょうが、それと変わって治安・インフラ・気候・自然災害・国民性・医療・教育・福祉etc.何かしらのポイントが下がる場合がほとんどだと思います。

筆者はオランダの前は別の某国に住んでいましたが、そこでは物価はオランダや日本の数分の一、道を適当に歩いていて数分で物件を見つけ、身分証明書1つでそのまま契約したこともありました。

が、その一方で治安がヤバくて犯罪は日常茶飯事、屋台はもちろんちゃんとした飲食店で食べてもお腹を壊す、医療水準も低いなどなど、しっかりと立派なオチが。

同じ映画を見たり同じ料理を食べたりしても人により評価が異なるのと同様に、オランダに対し良い印象・悪い印象を持つ在住者がいるのはごくごく自然なこと。

在住者のSNSやブログを漁っていると様々な感想・意見・評価・経験談が溢れ、これから移住しようと考えている人は迷ってしまうかもしれませんが、あくまでもそれらは赤の他人の言っていることに過ぎず、あなたがどう感じるかは実際にあなた自身が体験しないと決して分からないのです。

まとめ

オランダに住む筆者が、物価高騰で揺れる欧州からお伝えしました。

コロナに次いでウクライナ侵攻と、歴史的な出来事が立て続けに起きている現在、それまでの『当たり前』や『常識』は簡単に崩れ去ってしまうことを、世界中の人々が実感しているのではないかと思います。

数年前に筆者が移住した時よりも生活費が上がっているのに加え、円安も加速しているため、日本からの移住者には向かい風が吹いているのは確か。

それでも特にヨーロッパでフリーランスとして腰を据えて定住したい人にとっては、今でもオランダはとても魅力的な候補地だと思います。

『誰でも簡単に』とは言えなくなっているものの、オランダ移住に興味を持ったら、チャレンジしてみる価値はあるのではないでしょうか。

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