サッカーファンであれば、本場ヨーロッパのスタジアムで生観戦したいと思ったことがある人は多いはず。
しかし物価の高いヨーロッパで試合観戦となると、チケット価格が気になるところ。
そこでこの記事では欧州在住でよくサッカー観戦にも行く筆者が、欧州サッカーのチケット価格について解説します。
チケット価格はピンキリ!
はい、いきなり面白くもなんともない結論ではありますが、海外サッカーと言ってもその価格は千差万別です。
筆者はオランダ在住で国内外の様々な試合観戦に行っていますが、買うのを諦めるほど高い場合もあれば、ビックリするほど安い場合もあります。
ごくごくざっくりとした印象としては、やはりクラブの試合でも代表の試合でもその国の物価とチケット価格はある程度は比例すると言えるかもしれません。
ワールドカップやEURO(欧州選手権)のような世界的な大イベントはともかく、基本的にはクラブにしても代表チームにしても観戦に来るのは地元民が多数ですから、その地域の物価に合ったチケット価格になるのは自然なことですよね。
もう1つの原則として、人気・需要が高い試合=チケット価格も高いというのも、大体当てはまると言っていいでしょう。
例として、イングランドのプレミアリーグでは“ビッグ6”と呼ばれる人気&実績のある6クラブ(アーセナル、チェルシー、トッテナム、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、リヴァプール)が対戦相手の場合、それ以外の試合よりチケットが高くなることが多いです。
サッカー観戦の目的は人それぞれですが、やはり基本的にはスター選手によるレベルの高い試合が観たい人がほとんどなので、需要が高いビッグクラブの試合ほどチケットが高くなりがちな訳ですね。
最後にもう1点、これは説明不要かもしれませんが、同じ試合でも席によって値段は何倍も差があるのが普通です。
一般的にはゴール裏や最上階の席が安く、1階メインスタンドやバックスタンドが最も高い席となり、さらに食事などが付いたホスピタリティチケット(いわゆるVIPチケット)になると数万円〜数十万円になることも。
それでは続いて、具体的に筆者が観戦したいくつかの試合のチケット価格を紹介しましょう。
これが30年前の情報とかだと全く参考にならないでしょうから、ここ数年のものに限定しています。
¥2000以下で観た試合例
特に2022年のウクライナ侵攻以降、記録的なインフレや円安がしばしばニュースで話題になっていますが、そんな中でも日本円で¥2000以下でも観れる欧州の試合はあります。
こちらは2022年9月にイタリア・ミラノで観戦した、UEFAネーションズリーグのイタリア代表vsイングランド代表の試合。
前年のEUROの決勝でも対戦した欧州屈指の強豪国同士のカードですが、チケットはわずか€11。
これは子供席だとか女子代表やU17代表だとかでは一切なく、普通に男子のA代表チームの試合の通常チケットです。
ご存知かもしれませんが、ネーションズリーグは2018年に創設されたばかりの新しい大会で、格や人気、知名度はワールドカップやEUROに比べるとずっと低いのは間違いありません。
ただそれを踏まえても、前年のヨーロッパチャンピオン&準優勝国の対戦がランチより安い程の料金で観れるのは、かなりお値打ちではないでしょうか。
もう1試合、ほぼ同じ時期の2022年7月にイングランドで観戦した女子EUROのグループリーグ・オランダ代表vsポルトガル代表も£10=当時のレートで約¥1600でした。
この2022年に行われた女子EUROではぶっちぎりの過去最多の観客を動員したそうで、女子サッカーの人気は年々高まっていますが、それでもまだチケット価格は男子の試合よりずっと安いのが一般的。
今後、女子サッカーの人気&需要が高まるのにしたがって全体的にチケット価格も上がることが予想されるので、お得に観戦したいなら早めに観るのが良いかも?!
さらに驚愕の安さだったのが2023年12月に観戦したイタリア・セリエAのエンポリvsレッチェで、その価格なんと€5!!
正直セリエAの中でもマイナーなクラブ同士の一戦という印象なのは否定できませんが、エンポリはイタリア指折りの観光都市であるフィレンツェから電車1本30分なので、フィレンツェ観光のついでに観戦できるのは大きなメリットでした。
ちなみにこの試合は対戦相手がマイナーだっただけではなく、真冬の月曜の18:30キックオフという閑古鳥が鳴く要素が満載の試合だったこともあってか、€5=最安のチケットで数カテゴリー上の席で観戦させてくれたようです。
良し悪しは別として、販売後すぐに完売になり高額で転売されるような需要の高い試合もあれば、€5でも満席に程遠い試合もあるという、分かりやすい例と言えるかもしれませんね。
なお2024年夏のパリオリンピックでは男子も女子も€15〜と、円安により¥2000こそ超えるものの、かなり良心的な価格設定でした。
この後にも少し触れますが、このパリオリンピックの直前にドイツで開催されたEURO2024ではこの10倍のチケット価格でもほぼ完売していたので、需要(人気)&価格の低さに正直少し驚きました。
¥5000前後で観た試合例
筆者自身が最も買うことが多いのが、大体これくらいの価格帯のチケット。
一例目はコロナ直前の2019年12月に観た2019/2020シーズンのUEFAチャンピオンズリーグのグループステージ・ベンフィカvsゼニトの試合で、チケットは€40でした。
この時はサッカー観戦がメインと言うよりは普通にポルトガルに旅行に行き、試合観戦は第二・三の目的という感じだったため、試合当日に観戦を決め、直接スタジアムでチケットを購入しました。
公式サイトから購入する場合、オンラインでもスタジアムの窓口でもチケット料金はほぼ変わらないはずなので(場合によっては多少手数料などがかかる事も)、どちらが得or損ということはないでしょう。
この試合から約3年半後、円安が爆速した2023年6月にウィーンで観戦したEURO2024予選のオーストリア代表vsスウェーデン代表も€32=当時のレートで約¥4800でした。
イタリアが安すぎて感覚がおかしくなりますが、オーストリアもスウェーデンも中堅国ながらビッグクラブ所属のトップ選手を抱える良い代表チームで、国の物価を考えると妥当な価格帯な気がします。
特にこの試合が行われた6月はご覧の通り夜21時を過ぎても明るく、気温も暑すぎず寒すぎずの快適さで、スポーツ観戦には最高の環境でした。
¥10000前後で観た試合例
さて筆者は庶民派でなおかつサッカー観戦は『ラグジュアリーな体験』ではなく『日常的なイベント』として捉えているので、通常あまり高額なチケットには手を出しません。
“高額なチケット”がいくらなのかは人それぞれの金銭感覚により異なりますが、筆者の場合、今まで欧州で観戦した試合のほとんどは€60以下のチケットです。
そんな中、数少ない“高額なチケット”がハンガリーの首都ブダペストで2021年6月に観戦した、EURO2020のベスト16・オランダ代表vsチェコ代表。(※チケット購入は対戦カードが決まる前)
コロナの影響で東京オリンピックと同様に2020年から1年延期になって開催されたこのEUROで、他会場が人数上限を設ける中、なんの遠慮もなく6万人の大観衆を詰め込んで話題を呼んだのがこのブダペストです。
通常EUROやワールドカップではカテゴリー1〜3のシンプルな価格設定のことが多く、筆者はカテゴリー2=3段階の価格設定で2番目のチケットで観戦しました。
EUROはワールドカップと共に4年に1度のヨーロッパ最大のスポーツイベントの1つのため、その試合が日本円で¥10000ほどならリーズナブルかも?
ちなみにEURO2024のチケットの公式価格はこのようになっています。
もう1例、少し遡って2018年4月に観戦したUEFAチャンピオンズリーグの準決勝バイエルン・ミュンヘンvsレアル・マドリードも、€70=当時のレートで約¥9200だったようです。
残念ながら他の席の価格は覚えていませんが、これは同試合の最安の席だったのは確かです。
ドイツの絶対的王者であるバイエルン・ミュンヘンとスペインの白い巨人レアル・マドリードの対戦は間違いなく世界トップレベルの試合で、結果的にこの2017/2018シーズンにレアル・マドリードがチャンピオンズリーグ3連覇を達成したことも、それを物語っていると言えるでしょう。
最安の席のため見やすさとしては100点満点ではありませんでしたが、それでも世界最高峰の試合のプレーそのものはもちろん、独特な緊張感、高揚感、興奮、歓喜に失望etc.も、存分に味わえました。
チケットを安く購入するには?
ここまでいくつかの価格例を解説してきましたが、意外と安いチケットもあると感じたのではないでしょうか?
もちろん試合によってはこれより何倍も高いこともあるのでケースバイケースではありますが、少なくともヨーロッパのサッカー観戦が富裕層に独占されている訳では全くないのは充分わかったと思います。
さすがに¥2000以下で買えるチケットはかなり限定されますが、円安&インフレが加速した2022年以降でも、日本円で¥5000前後で観られる試合は決して少なくありません。
ではそのピンキリのチケット、どうすれば安く手に入れられるのでしょうか?
公式サイトから買う
まず大大大原則が、公式サイトから正規ルートでチケットを購入することです。
その詳細はこちらの記事で紹介していますので、ぜひチェックしてもらえればと思います。
オンラインでチケットを購入する場合、最初はグーグルなどで検索する人が多いですが、そうすると公式サイトではない紛らわしい転売サイトがいくつもヒットするのは珍しくありません。
またスタジアム周辺で直接チケットを売る昔ながらのダフ屋もいて、もし欲しいチケットが手に入っておらず完売してしまっていたら、つい手を出したくなってしまう可能性も。
しかしこういった正規ルートではないチケットは定価の数倍の価格で販売されていることが多く、それでいてチケットが届かない、スタジアムに入場できない、席が重複していたなどなど、トラブルは数え切れないほどあるようです。
そのため、たとえ正規ルートで完売してしまっていたとしても、転売サイトやダフ屋からチケットを買うのは絶対におすすめしません。
また大手旅行会社による海外サッカー観戦ツアーもオプションの1つで、こちらはきちんとした会社ならダフ屋なんかよりは間違いなく安心ですが、それなりに価格が盛られているのが普通です。
例えば海外旅行が初めてだったり全く外国語ができなかったりする人には安心でしょうが、そうでなければ自分で手配した方が安く済むのは言うまでもありません。
学生・シニア・ファミリーなど割引を利用する
先に少し書いたように、地元サポーターの存在が大きいクラブや代表の試合では、子供・学生・シニア・車椅子利用者・ファミリー(大人2人+子供2人など)etc.対象の割引チケットがあることも。
こういった割引チケットを購入した場合、入場時にそれを証明するID(学生証など)が必要なので、忘れないようにしましょう。
その他に“Restricted view”(制限された視界)という席もたまにあり、これはスタジアムの構造により屋根・柱・柵などが視界を妨げてしまい、その代わりに安くなっているチケットです。
どの程度制限されるかはこれまたスタジアムにより差があるため、心配ならチケット購入前にスタジアム名(アルファベット)+Restricted viewでググってみるといいでしょう。
例としてそのRestricted viewの席で観戦した、デンマーク首都のコペンハーゲンのスタジアムがこちらです。
え、屋根も柱も全然視界にないけど??
はい、結果的にこの席の場合、視界の制限はあまり気になりませんでした。
この席はブロックの最前列で、すぐ前に胸ぐらいの高さの柵があったので、小さな子供だと確かに見えづらかったでしょうが、160cm程度の筆者でも背筋を伸ばせばほとんど視界の邪魔にならず観戦できました。
この席でDKK150=約¥2900(この試合の2022年6月当時レート)は、物価が鬼高いことで知られるデンマークでは破格と言っていいレベルで、実際に1列後ろの席だと数倍の価格でした。
このような様々な割引チケットはオンラインでの席選択時に表示されていることが多いので、購入時によくチェックすると良いでしょう。
頻繁にチケット販売ページを確認する
公式サイトによる正規ルートのチケットの場合、例えば航空券やホテルのように直前になったら安くなるとか毎日値段が変動するとか、そんなことは起きません。
ただし、様々なカテゴリーの席のチケットを段階的に販売していったり、あるいはシーズンチケット保持者が行けない試合のチケットを直前にリセールしたりすることはあります。
そのためもし1度チェックして安いチケットが残っていなかったり全席が完売になったりしていても、時間をおいて何度か確認すると新たに予算に合ったチケットが取れる場合も。
人気の高いクラブや代表チームの試合はチケットの争奪戦が起きがちですが、何度もチケット販売状況を確認することでチケットゲットのチャンスは上がるでしょう。
【番外編】運が良ければタダで観れることも?!
『タダほど怖いものはない』とはよく言ったものですが、怖くもなんともなくタダで観戦できたことがあります。
特別なトリックも何もなく、それはあまり重要でない試合(国際親善試合のイングランド代表vsナイジェリア代表)の前半終了前くらいにスタジアムに行って、チケット売り場で値段を確認したところ「もう入ってええよ!」と無料でチケットをくれました(笑)
この時はロンドンに旅行し、試合があることも知っていたのですが、事前にチケットを買うほどの熱量はなかったので通常の観光後にスタジアムに寄って、その場の気分で観るかどうかを決めよう、と。
さすがにこれは特例中の特例だとは思いますが、もし観光メインで試合を観るかどうか決めかねるという場合は、とりあえず試合当日にスタジアムに行ってみるのもアリではないでしょうか。
前述の通り、スタジアムの窓口ならぼったくられることもないため、タダというのは例外としても正規以上の価格を払う心配もありません。
ただしすでに完売していたり、そもそも当日販売がなかったりする場合もあるので、足を運ぶ前にクラブや代表の公式サイトでチケット情報はチェックしておくことをおすすめします。
高いチケット=良い試合とは限らない!
この記事を読んでくれている人の中には、経済的にあまり余裕がない学生さんもいれば、自由に遊べるお金が充分ある人もいるでしょう。
経済的に余裕がある人ならこんなケチくさく数千円の世界でゴタゴタ考えず、何万円のチケットだって買えるよ!・・・と思うかもしれません。
もちろんそれぞれの経済状況は違うので、特に日本から欧州にサッカー観戦を目的で渡航する場合、奮発して高いチケットを買うのも良いでしょう。
ただし欧州で何十試合と観戦している筆者の経験から1つ書いておくと、チケットの価格と試合の面白さや満足度は必ずしも比例しません。
ホテルや食事もそうですが、基本的に我々は支払う金額が高ければ高いほど期待値も大きくなりますよね。
『せっかく高いチケットを買ったんだから』『わざわざ日本から来たんだから』『有名な選手が所属しているから』・・・これらは残念ながらファンの一方的な期待で、それで良い試合が保証される訳ではありません。
よくあるガッカリ体験として、
・目当ての選手が出ない(怪我・ローテーション・出場停止など)
・試合内容が面白くない(消化試合・レベルが低い・退場者が出て一方的な展開になるなど)
の2つがあり、場合によっては何週間・何ヶ月も楽しみにしていた試合が、キックオフ前にすでにテンションがだだ下がりになっていることも。
そのため、筆者の個人的な見解ですが、チケット購入はたとえ酷いク○試合になったとしても後悔しない程度の額にするのが無難だと書いておきます。
こちらはEURO2024の観戦レポートですが、EUROにせよワールドカップにせよ数十年前に比べて出場枠が激増しているため、こういった世界最高峰の大会ですら相当な塩試合になる可能性も充分あるのです。
『ガッカリ観戦』にしないためのポイントは?
えええ、せっかく観戦に行くのにそんな○ソ試合になったら嫌だなあ・・・と誰しもが思いますよね。
そこで何度もク○試合を体験してきた筆者が、いくつかのポイントをシェアします。
①試合選び・・・消化試合や捨て試合になる可能性のある試合を避ける。
ワールドカップやEURO、チャンピオンズリーグのグループステージの最終戦(CLは最後の2戦)や、リーグ戦の最後数試合はすでに決勝トーナメント突破や敗退、あるいは優勝決定後で消化試合となり、主力選手を温存する事も珍しくない。
またビッグクラブが明らかな格下クラブと対戦する際も、主力選手を休ませて控え選手中心の試合になりがち(特にカップ戦)。
②推しの選手を複数作る・・・お目当ての選手が1人だけだとその選手が欠場した時にすでにテンションがガタ落ちになるため、何人か『推し』がいる方がベター。
選手は機械ではなく人間なので、仮に不動のレギュラーだとしても直前の怪我や体調不良で欠場することはあり得る。
推しが複数人いれば、そのうち何人か出場しなくても致命的なガッカリにはなりにくい。
③サッカー以外も楽しむ・・・試合そのものが良い試合になるか否かは運次第とも言えるので、それ以外の観光・グルメ・ショッピング・イベント・写真撮影etc.、も旅の楽しみに加える。
試合がイマイチだったり応援するチームが負けたりするとガッカリするのは仕方ないが、それを吹き飛ばすように別のことを満喫できれば大きなダメージは残りにくい。
④先入観を持ち過ぎない・・・特定のチームや選手を応援するのももちろん良いが、過剰な先入観を持たずに観戦することで試合の勝ち負けや1人の選手の良し悪しだけではなく、多角的に楽しめることも。
具体的にはその時は無名だった選手が後のスター選手になるのは典型例で、観戦時には特に意識していなかったがあとから振り返ると貴重な試合だった、という経験もあり得る。
⑤ネタにする・・・試合が期待外れに終わった場合、試合直後は怒り・失望・悔しさ・虚無感などが心を支配するのは普通だが、たいてい時と共に一つのネタになる。
そういったガッカリがあるからこそ、素晴らしい試合が観れた時・推しが大活躍した時・応援するチームが勝った時に、感動できるとも言える。
まとめ
欧州在住の筆者が、欧州サッカーのチケット価格を中心に解説しました。
現代は数十年前と比較してクラブ戦も代表戦も格段に試合数が増えており、過密日程がしばしば論争になっています。
それはネガティブな点である一方、ファンが観に行ける試合が増えているのもまた事実で、試合や席を適切に選べば安いチケットを探すのはそう難しくありません。
しかしそれだけ試合数が多いということは、各クラブや代表チームが毎試合毎試合にフルメンバーで全力投球するとは限らないことも考慮して、予算に合ったチケットを買うことが大切です。
ヨーロッパでのサッカー観戦、ぜひ楽しんでくださいね!