日本でもその知名度が年々高まる、スペイン北部のサンティアゴ巡礼。気候の良さやサマータイムによる昼の長さから春〜秋が巡礼のベストシーズンと言われていますが、冬の巡礼はどうなのでしょうか?
2022&2023年に2年連続で真冬に巡礼を決行した筆者が、そのメリットとデメリットをまとめました。
【2021年末】筆者が行なった巡礼のルート&時期
サンティアゴ巡礼が2度目である筆者は、『ポルトガルの道(Camino Portugués)』をポルトからスタートしました。
ポルトからサンティアゴ・デ・コンポステーラまでは内陸を通る従来の『ポルトガルの道』と、大西洋の海岸沿いを通るルート(Camino Portugués por la Costa)の主に2つがあり、海好きの筆者は後者を選択。
またこの海岸ルートではポルトガルのカミーニャ(Caminha)から対岸のスペインにフェリーで渡り、ビーゴ(Vigo)などを通るルートもあるのですが、筆者は徒歩でスペインに渡りたかったので、カミーニャから2国を隔てるミーニョ川に沿って歩き続け、ヴァレンサ(Valença)からトゥイ(Tui)へ。
この道程で、ポルトからサンティアゴまではおよそ250km少々です。
このルートは高低差が少ないという、冬の巡礼では非常に重要な特徴があるのもポイントでした。
今回筆者はクリスマスが過ぎた後、12月下旬にスタートし1月上旬にゴールする、年越し巡礼となりました。
年末年始というのに加えてこの2021年12月はオミクロン株で世界が大騒ぎ、各国の渡航規制や入国要件、国内規制が目まぐるしく変更する慌ただしい状況。
同じEU圏のオランダ在住とは言え、ポルトガルへの渡航→スペインへの巡礼が100%可能とは確信が持てなかったため、とりあえず出発の約10日前にポルトへの片道航空券のみ購入。
巡礼がダメそうなら同じポルトガルのアソーレス諸島に温泉旅行というのほほんとしたプランBを用意しつつ、ポルトガル&スペインの最新情報をチェックする日々でした。
そして出発2日前に巡礼がOKだろうというGOサインを勝手に出し準備開始、出発前夜に翌ポルトガル到着日の宿をBooking.comで予約。
真冬&コロナ禍の巡礼という初めての経験にワクワクドキドキしながら、ポルトへと飛び立ちました。
【プチ追記】2022年末から2023年初めに“イギリス人の道”も歩いてみました。
意外とある!冬の巡礼のメリット
筆者自身も期待と不安が入り混じった真冬の巡礼でしたが、結果的にメリットも多いと感じました。
まとめると、このような点になります。
宿が貸切状態&安い!
オフシーズンである冬に加えコロナ禍により巡礼者や旅行客が極端に少なかったため、6人用や8人用、時には16人用などのドミトリーを1人で独占できたことは最大のメリットと言って良いでしょう。
それどころか宿全体で宿泊者が筆者1人のみという場合も何度もあり、通常では他の宿泊者十数人あるいは数十人とシェアするトイレやシャワー、キッチンやラウンジなどを文字通り独り占め状態。
利用するのが自分だけなので当然どこもピカピカ、衛生面が気になるコロナ禍では特に安心でした。
夏のピーク時はトイレやシャワー、キッチンも混み合い、利用したいタイミングで利用できないことも珍しくありませんが、冬はそんな心配は一切不要。
さらにこれだけガラガラでピカピカでも、多くの宿ではハイシーズンより宿泊料金が安いというのも抜群のお得感でした。(※私営アルベルゲの場合。公営アルベルゲは年間を通して原則均一料金です。)
街を彩るクリスマスイルミネーション
夏に比べるとどうしても暗い印象になりがちな冬ですが、その長い夜を華麗にメイクアップしてくれるのが、クリスマスのイルミネーションやデコレーションです。
筆者が通ったポルトガルの道を始め、サンティアゴ巡礼で通過する街にはロンドンやパリのような大都市はなく、派手さや豪華さで比較すればそれらの巨大都市には遥か及ばないでしょう。
しかし人口数千人規模の名も知れないようなこぢんまりとした街や村のどれもがそれぞれ異なるイルミネーションで飾られ、そのロマンチックな光の下で誰もが散歩や食事、写真撮影を楽しむ姿は非常に印象的でした。
ちなみにポルトガルやスペインではおおむね1月6日までクリスマスイルミネーションが飾られているので、12月25日を過ぎてもまだまだ楽しめますよ!
人が少ないので写真が撮りやすい
こちらもやはり巡礼者や観光客が少ないことによる恩恵ですが、絶景スポットが目白押しのサンティアゴ巡礼で、たくさん綺麗な写真を撮りたい!と思っている人には見逃せないポイント。
ハイシーズンであればセルフィーや風景写真を撮ろうと思っても次から次へと人が横切り・・・というような人気スポットや観光地でも、好きなタイミングで落ち着いて何枚でもシャッターを切れるのは冬ならではの大きなメリットです。
基本的に巡礼路を歩いている際は前にも後ろにも誰もいないことがほとんどで、360°撮り放題。
街や村に着けばさすがに人に出くわしますが、まあまあ人が多いと感じた観光スポットはスタート地のポルト大聖堂、ヴィアナ・ド・カステロ(Viana do Castelo)のサンタ・ルジア教会、そしてゴール地のサンティアゴ大聖堂ぐらいで、これらは超人気スポットなので夏ならさらに人が溢れかえっていたのは必至でしょう。
冬なりの自然の美しさ
自然美を期待してサンティアゴ巡礼に出かける人にとって、おそらく冬は最も敬遠されがちな季節でしょう。
新緑が眩しい春や色とりどりの花が咲き乱れる夏、そして紅葉や黄葉に染まる秋に比べると、冬は単調では?と思われがちですが、個人的には冬には冬なりの情景があって飽きることはありませんでした。
まずオレンジやレモンがこれでもかという程あちこちで豊かに実っていたのを始め、りんごやキウイ、柿にアボカドなど、空腹時には誘惑に負けて勝手に摘みたくなるほど様々なフルーツが。
さらに春のイメージが強いミモザが頭上からこぼれんばかりに咲いていたのは驚きましたし、菜の花畑もしばしば。
特定の花や植物がお目当ての場合はその旬の季節に訪れるのがベストなのは間違いありませんが、そうでなければあえて冬を避ける必要はないかもしれません。
閑散期らしいのんびりした雰囲気
これも巡礼に限らずオフシーズンに旅する際の典型的なメリットですが、街全体が静かなのでどこでも落ち着いて過ごせます。
例えば宿や飲食店、観光案内所でも他にゲストがたくさんいれば慌ただしく対応されがちですが、この時期ではより丁寧な接客が受けられたり、お互い時間を気にせずのんびり会話を楽しんだり。
この後にも記述しますが、冬×コロナで巡礼者との遭遇は極めて少なかったものの、その分宿のオーナーや街の人々とまったりと触れ合えたのは良い思い出です。
また筆者は今回はあまり観光らしい観光はしませんでしたが(ポルトもサンティアゴも過去に訪問済みだったため)、巡礼とセットでガッツリ観光もしたい人にはこのメリットは更に強く感じられるはず。
サンティアゴ巡礼はコロナ禍を除くと年間の巡礼者数が毎年過去最高を更新するほどのフィーバーっぷりなので、古典的な『巡礼路』らしい落ち着いた雰囲気を期待するなら、間違いなく夏<冬です。
【おまけ】意外と歩きやすい天候?
おそらく冬のサンティアゴ巡礼で最も多くの人が気になるのは、気候面ではないでしょうか。
先にも書いたように、筆者がこのポルトガルの海岸ルートを選択したのは他のルートより天候が穏やかそうという理由も大きかったのですが、結果的に想像以上に快適でした。
歩いた12日間のうち雨は2日のみ、あとはほぼ晴れで日中の気温は10〜18℃ほど。
例えば通常の旅行の場合、ビーチで日光浴したりカフェのテラス席でのんびりしたりするなら暖かいor暑い気候がベストですが、1日に何時間も歩く巡礼では25℃より15℃の方がずっと過ごしやすいと思います。
ただし、天候に関しては運によるものも大きく、ポルトガル北部やスペイン・ガリシア地方の一般的なデータでは冬の方が雨が多く日照時間もずっと短いのは事実。
当然毎年良い天候になる保証はできないのでこのポイントはゴリ押しはしませんが、少なくとも暑い気候が苦手な人にはメリットにはなるのではないでしょうか。
【やっぱり】この巡礼のちょうど1年後の2022年12月下旬から1月上旬に行なった“イギリス人の道”の巡礼では、6日間の巡礼中晴れは1日のみ、5日は曇りor雨でした。
宿のオーナーなど地元民の話でも、2021年〜2022年の冬は異例の天気の良さだったそうで、やはり基本的にガリシア地方の冬は雨が多いと認識しておいた方が良さそうです。
冬ならではのデメリットも・・・
ここまでのメリットを読むと、うわあ冬の巡礼最高かよ!こりゃ冬に行くしかないな!!\(^o^)/
・・・と思われるかもしれませんが、ちょっと待ってください。
こういったプラスに感じた点がいくつもあった一方で、やはりうーーーーーーん・・・とマイナスに思えた点があったのも事実です。
それはどんな点でしょうか?
昼が短くすぐ暗くなる
これは巡礼をする前から分かりきっていたことですが、やはり昼が短い!
巡礼の前半・ポルトガルでは17時頃に日が暮れてしまうので、早く宿に着かないとその後に街散策をする頃にはもう真っ暗に。
そして巡礼の後半・スペインはポルトガルと1時間の時差があるので、日暮れが18時頃になったのは良いとして、今度は日の出がなんと9時過ぎという遅さ!
公営のアルベルゲ(巡礼者用の宿)では朝8時をチェックアウトとしている所が多いので、夏なら爽やかな青空の下で鳥のさえずりと共に軽快に出発できるところを、冬だと真っ暗で寒い中を追い出されるように宿を後にすることに(´・ω・`)
他の巡礼者との交流が少ない
何百㎞という距離を何日もかけて歩くサンティアゴ巡礼では、世界中からの巡礼者との交流や出会いを楽しみにしている人も多いでしょう。
それぞれの経験を語り合ったり、一緒に料理や食事を楽しんだり、疲れた時に声を掛け合ったり・・・えー、残念ながらこの真冬の巡礼ではそういった経験はあまり期待はできないかもしれません。
もっともこれはただの冬ではなくコロナ禍で、しかも筆者が一番人気の『フランス人の道(Camino Francés)』ではないルートを歩いたことも影響していると思いますが、前半のポルトガルでの7日間で見かけた巡礼者は2人のみ(それも筆者が鈍足のためあっという間に見えなくなる)、宿で他の巡礼者と一緒になったのは0回でした。
後半のスペインに入ってようやく会話を交わす巡礼者と遭遇しますが、結果的に全行程の約250kmのうち約235kmを完全に1人で歩き、サンティアゴ到着時ももちろん1人。
歓喜のサンティアゴ到着を他の巡礼者と祝い合うこともなく、ひっそりとスタートしてひっそりとゴール、という感じでした(´・ω・`)
閉まっている宿や飲食店が多い
これも閑散期(&コロナ)ではやむを得ない点ですが、冬は様々な施設やお店が閉まっていることは覚悟した方が良いでしょう。
コロナの影響もあってか、筆者が歩いた際にはこのルート上の公営のアルベルゲの半分以上は閉まっていました。(2021年末〜2022年1月上旬時)
そのためこの時期は公営のアルベルゲだけではなく、併用して一般の宿泊施設をBooking.comなどで利用するのがベターだと言えそうです。
また、次の村で休憩しよう!と数km必死に歩いてその村に辿り着いても、飲食店が一軒も営業していないことも(´・ω・`)
そのため水はもちろん、フルーツやクッキーのような簡単にエネルギー補給できる食料をある程度持ち歩くのが無難です。
洗濯物が乾かない
もう1つ、地味ながら切実なマイナスポイントが、洗濯物が乾きづらいこと。
長い巡礼では、インナーウェアや靴下など小さいアイテムは毎日自分で手洗いする人が多いと思います。
夏であれば午後に宿に着いてもすぐ洗濯すれば翌朝には乾いてるはずですが、冬だと暖房がよく効いていないと全く乾きません。
宿の中には洗濯機や乾燥機を完備している所もありますが、靴下1足のために有料の乾燥機を使うのも・・・とケチ根性が働き、なかなかためらったものです。
筆者は靴下3足を持参し、そのうち1足を巡礼2日目に早々となくしたので靴下2足という貧相な部隊でなんとか12日間の巡礼を乗り切りましたが、ジメッとした靴下を身に着けるリスクを回避したければもう少し余分に持っていっても良かったかもしれません。
冬に巡礼する際の注意点!
筆者は実際に自分で真冬の巡礼を体験する前、この記事でサンティアゴ巡礼のベストシーズンや避けた方が良い時期などについて記述しました。
そして2022年と2023年の年末年始に2年連続で筆者自身が巡礼してみて、やや繰り返しにもなりますが、改めて感じた注意点などをまとめるとこのようになります。
歩くルートは慎重に決める
どの季節でも自身の体力や経験値に応じたルートを選択することは大切ですが、冬は高地では降雪も見られることから、その重要性は更に高まります。
例えば一番人気の『フランス人の道』には最初のピレネー山脈を始め標高1000mを超えるポイントが4ヶ所もあるため、冬季は上級者でない限りこれらの高地を外したサリア(Sarria)からスタートするのがベスト。
巡礼開始後も天気予報はこまめにチェックし、天候や体調によっては無理せずペースを落とすなど、柔軟に対応しましょう。
また前述の通り冬は閉まっている宿が多いので、特に巡礼者が少ないルートだと歩いても歩いても宿がない、という可能性も。
もう1つついでに加えると、仮に一般の宿でBooking.comなどで空室があっても、予約なしで直接行くと閉まっていて誰もいない場合が。
そうするとヘトヘトになって宿に辿り着いても中にも入れず、結局電話やネットで予約をしてスタッフが来るのを待つ必要があり、周りにカフェなどがないと時間を潰すのも一苦労になります。
祝日はほぼ全ての店が閉まる
日本では正月だろうがクリスマスだろうが、コンビニもファストフードもファミレスも朝から晩まで普通にオープンしていますが、サンティアゴの巡礼路では祝日はほぼ全ての店が閉まると認識しておいた方が良いです。
小さな村であればあるほどその傾向は強くなるので、クリスマス(12月25日・地域によっては12月26日も)や元旦、スペインでは1月6日の公現祭も祝日なので、これらの日はなるべく大きな街に滞在するのがベター。
日程上どうしても大都市に宿泊するのが難しい場合は、最低限必要な食料品は前日までに買っておくと良いでしょう。
また宿も事前に予約しておくか、公営のアルベルゲのように事前予約不可の宿でも直接電話してオープンしているかを確認しましょう。
こちらは2022年暮れに歩いた“イギリス人の道”のとある公営アルベルゲの受付で撮ったメモ。
字が下手すぎて何が何やらという感じでしょうが、要はPresedoという村のアルベルゲとレストランが特定の日or期間閉まりますよ、という注意喚起。
巡礼路沿いの宿や飲食店、スーパーなどの有無はカミーノ関連のアプリや無料マップで容易にチェックできますが、なんだかんだでラテンの国なので、こういった急なクローズもあり得ると想定しておいた方が良いでしょう。
巡礼に必要なアイテムを厳選する
これも冬限定の注意点ではありませんが、やはり気候が厳しい時期にはより一層持ち物に気を配ることが大切です。
寒さや雨対策はもちろん、先に述べたように洗濯した物や濡れた物が乾きづらい点を考慮して、少し余分にスペアを用意するのもポイントの一つ。
かと言って持って行き過ぎても荷物が重くなり身体への負担が大きくなるので、例えば靴下であれば4足ほどで充分だと思います。
特にタオルやインナーウェアは軽くて速乾性に優れたタイプを使い、翌日に濡れたまま持ち歩かなくて済むようにしましょう。
基本的に巡礼に必要な一般的なアイテム(日用品・消耗品・衣料品など)は巡礼の途中の街でも購入できるので、「念の為」「もしかしたら要るかも」とあれこれ持参するよりは、必要最低限の荷物に絞り、足りなくなったり失くしたりしたら現地で購入する方が賢明だと思います。
冬のサンティアゴ巡礼で便利なアプリ
筆者は巡礼開始当初、前回と同様に極力情報を省いたアナログ巡礼を行なっていました。
しかし数々のアルベルゲや飲食店がクローズする冬期&コロナ禍で、あまりにも情報に疎い筆者に見かねて、とある宿のオーナーが筆者のスマホを奪い勝手におすすめアプリをインストールしてくれました(笑)
Camino Ninjaというアプリで、一言で言うと神アプリです。
その最大の特徴はオフラインでも自分の位置やルート上の宿や飲食店の情報を得られるので、wifiを求めて右往左往する必要がありません。
2022年1月時点で日本語対応はしていませんが、アイコンや数字、地名などシンプルな内容なので使いこなすのは簡単です。
特に冬期は宿の営業状況がグーグルマップや公式サイトを見ても不明なことが多く、このようにオープンしているか否かがひと目で分かるのは非常に便利でした。
このアプリを使えば、何km先に街や村があり、そこには宿・飲食店・ATM・スーパーetc.の施設があるかどうかが分かるため、たとえ周りに誰一人として巡礼者がいない状況でも(実際に冬はその状況が多い)、精神的にかなり安心して巡礼することができると思います。
ただし、1度「オープン」となっている宿に夕方着いたら閉まっていて、記載されている宿の電話番号に電話しても誰も出ず、結局次の村まで歩いたことがありました。
そのため今日はここに泊まりたい、という宿があって事前予約が不可の場合、その日の午前中辺りに電話でオープンしているか確認を取るとより確実です。
【重要追記】2022年7月にこのアプリのクリエイターが他界されたようで、その後同アプリがインストールできなくなっています。(2022年12月情報)
今後再び使用できるようになるかは不明ですが、いずれにせよ巡礼に役立つ素晴らしいアプリを開発された方が安らかに眠ることを祈ります。
こんな人は冬の巡礼向き?!
ここまで冬の巡礼のメリット・デメリット・注意点を書いてきましたが、まとめるとどのような人に向いているのでしょうか?
筆者の個人的な見解ではありますが、こういったタイプにおすすめです:
- 他人との交流より自分自身と向き合うことや自然鑑賞するのが目的
- 混雑した場所やガヤガヤした雰囲気が苦手
- 暑い季節より涼しい季節が好き
- ドミトリーのような大人数が同室の宿泊施設に慣れていない
- 1人で食事や観光するのが苦ではない
冬の巡礼では人とめったに出会わないので、要は長い長い巡礼を1人でも楽しめるか、というのが一番のポイントではないかと思います。
人と話さないと退屈、ひとりごはんは寂しい、常に誰かと喜びや感情を共有したいetc.というタイプは、閑散とした冬より巡礼者が多い夏の方が向いているのは明らか。
逆にマイペースに写真を撮ったり、歌ったり、瞑想したり、ボケたり(勝手に)、ツッコんだり(勝手に)・・・のように1人で勝手に楽しめるタイプなら、冬の静けさはマイナスどころかプラスにもなり得ます。
またアルベルゲを利用する場合、基本的に男女同室で仕切りなどもないため、安宿に慣れていないと戸惑うかもしれません。
その点冬は圧倒的に宿泊者が少なく、場合によっては1人で独占できるので、左右のベッドにびっしり人が埋まってイビキや寝言の大合唱がこだまするハイシーズンよりずっと過ごしやすくなります。
逆に冬の巡礼に向いていないのは?
上に書いたのと逆のタイプ、つまりたくさんの巡礼者と交流したり賑やかな雰囲気が好きだったりする人が冬向きではないのはすでに触れましたが、体力面・金銭面・日程面のいずれも融通がきかない人も、冬の巡礼は注意した方が良いかもしれません。
体力面→1日平均何km歩けるか
金銭面→1日平均いくら費やせるか
日程面→巡礼全体に何日掛けられるか
例えば『1日50km歩けます、毎日€200払えます、時間もいくらでもあります』という人は最強ですが、中には1日20kmが限界という人や、予算や日程がきっちり決まっている人もいますよね。
冬は閉まっている宿が多いことや悪天候の日のペースダウンを考慮すると、毎日平均的に同じ距離・ペース・予算で歩けない可能性も。
例として筆者が歩いた際に、出発から約15km地点の街の次に安い宿があるのが約28km地点の街で、その間の約13kmに空いている宿泊施設が1泊€250くらいの貸切コテージ1軒しかないというケースがありました。
筆者は鈍足なので1日18〜25kmくらいのペースがベストだったのですが、この場合は、
①15km地点で泊まる
②€250の貸切コテージに泊まる
③28km地点まで歩く
のオプションしかなく、結局その日の天候や体調、ルートの難易度(高低差など)と相談し、③を選択しました。
もし日程に特に制限がないなら①、あるいはお金に制限がなければ②を選んでも良いと思いますが、体力もお金も時間の融通性もない人だとちょっと困りますよね。
もし冬に巡礼したいが体力・お金・日程のいずれかの面で不安があるなら、最も巡礼路の設備(宿泊施設や飲食店、スーパーなど)が整ったスペインのサリア(Sarria)やトゥイ(Tui)からスタートするのが無難だと思います。
語学が全くできない人は注意?
冬の巡礼のもう一つの特徴が、公営・私営共にアルベルゲにスタッフが常時いないことが多い点。
予約不可の公営アルベルゲの場合、
−入り口に連絡先が書かれた紙が貼ってある
→電話をすると鍵が入ったキーボックスの暗証番号を教えてくれる
→鍵を開けて中に入りしばらくするとスタッフが来て受付&支払い
・・・というパターンが多かったです。
つまり最低限の英語orスペイン語もできないと、少し不便な可能性が。
これが巡礼者の多い時期なら適当に語学ができる人をとっ捕まえて電話してもらうことも可能でしょうが、冬はとにかく人が少ないので、そういう人が現れないとひたすら宿の前で待ちぼうけになってしまうことに。
もし電話でのやり取りに不安があるなら、Booking.comなどで事前予約する方が安心かもしれませんね。
まとめ
スペイン北部のサンティアゴ巡礼を冬に行なった筆者が、そのメリットやデメリットを解説しました。
なお、この2021年の12月から2022年の1月はコロナの影響も大きかったため、例年以上に巡礼者が少ない・宿や店が閉まっているといった特徴があったと思われます。
そのためコロナが収束した場合は、冬でももう少し賑やかなのかも?という気もしますが、少なくとも7月8月よりずっと静かなのは間違いありません。
この冬ならではの静けさをプラスと考えるかマイナスと考えるかは、あなた次第。
プラスと感じたなら、ぜひ冬のサンティアゴ巡礼にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。