近年、日本人にも注目度が高まっているスペイン北部のサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路。
フランスやポルトガルからを含め、様々なルートを数百㎞に渡って歩く巡礼では、持っていく荷物を選定することが非常に大切です。
この記事では巡礼を3回経験した筆者が、持ち物のポイントを解説します。
10リットルのバックパックでも巡礼はできる!
この記事を読んでくれているあなたはきっとサンティアゴ巡礼に興味がある、または実際に予定を立てていて、どんな物を持っていけば良いのか・持っていかなくて良いのかを知りたいのではないでしょうか。
まずハッキリとしておきたいのは、巡礼の目的・巡礼者の体格・トレッキングやウォーキングの経験値・日程・季節などによって、必要なアイテムは異なります。
分かりやすい例として、これを読んでいるあなたが145㎝36kgか197cm88kgかで、使用するバックパックのサイズは全く違うでしょうし、バッグのサイズが違うということは持てるアイテムの量も違うということになりますよね。
一般的な目安として、荷物は自分の体重の1/8〜10程度の重さにすると良いと言われています。
しかし筆者が『10リットルのバックパックでも巡礼はできる!』とタイトルに書いたのは、実際に筆者が10リットルのバックパックで巡礼したからです。
嘘でしょ??と思うかもしれませんが、本当です。
他の巡礼者が本格的なゴツいバックパックをバッチリ装備している中、筆者はちょっと図書館行ってきますみたいなナメた格好で、目印のホタテの貝殻と杖がなければまず巡礼者には見られなかったことでしょう。
残念ながらその思い出のバックパックはその数年後にドイツのミュンヘンで盗まれて現存していませんが、なぜそんなに小さいバックパックにしたかというと、筆者は当時世界をあちこち旅していて、その途中でサンティアゴ巡礼に行ったからです。(※まだオランダに移住する前)
その際スーツケースとその10Lのバックパックしか持っておらず、巡礼のためだけに新しいバックパックを追加購入するのは面倒だったので、もうこれでいいや、と。
ちなみにスーツケースはスタート地のレオンの郵便局で、ゴール地のサンティアゴ・デ・コンポステーラに郵送しました。
参考サイト:https://www.elcaminoconcorreos.com/en/transfer-luggage
サンティアゴ巡礼に関する情報サイトやブログでは、『バックパックのサイズは30L〜がおすすめ』と謳っている場合が多いように思いますが、10Lでも20Lでも巡礼はできます。
ただし繰り返しになりますが、個々の体格、巡礼の予定日数、目的などによってバックパックのサイズも持っていくべき物も変わります。
それではまず実際に筆者が巡礼したルートや時期を見てみましょう。
筆者が行なった巡礼の詳細
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ルート&距離
筆者が最初に歩いたのはサンティアゴ巡礼で最も人気の「フランス人の道」のレオンからサンティアゴ・デ・コンポステーラまで。
距離は画像のとおり、300kmちょっとです。
この後にも書きますが、時期的にオフシーズンに差し掛かっており、また色々な意味での準備もろくにしていなかったので、「これくらいなら歩けそう」という漠然とした自分の感覚でスタート地を決めました。
時期&日数
時期は10月下旬から11月中旬まで、日数は事前に決めていませんでしたが、結果的に17日間でした。
約300kmを17日というのは、サンティアゴ巡礼ではかなりのんびりめのペースだと思います。
特に日数に制限を設けていなかったため、多い日は25km以上歩き少ない日は10km少々でストップするなど、天候や体調と相談しつつ自分のペースで歩きました。
巡礼の目的&経験値&体格
もともと筆者は短期間ながらサンティアゴ・デ・コンポステーラに住んでいたことがあり、サンティアゴ巡礼には興味を持っていました。
それからかなりの時が流れ、日本で仕事を辞めた後色々な国を旅していて、観光!グルメ!!インスタ映え!!!みたいな『ザ・旅行』とは違う経験をしたいと思ったことが目的の一つです。
健康にはまあまあ自信がありましたが、トレッキングやウォーキングの経験値は限りなくゼロに近く、運動もあまりしない方。
そして体重は永遠の秘密ですが、特別デカくも華奢でもない日本人女子の標準体型(身長&体格)と言えるでしょう。
巡礼に持っていった物
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言うまでもなく、巡礼に使うバックパックを10Lにすると決めた時点で、持てるアイテムはものすごく限られます。
その少数精鋭のアイテムはこのようなラインナップです:
−寝袋・・・スペインの前に旅していたトルコで購入。アルベルゲ(巡礼者用宿)で利用するため。バッグ内には入らないので上にくくりつける形。
−杖・・・同じくトルコで購入。伸縮可能なタイプ。
−ダウンジャケット・・・レオンの前に寄ったバルセロナのスポーツ用品店Decathlonで調達。メモによると、この寝袋+杖+ダウンジャケット=約7000円だった模様。安すぎかよ。
−長袖シャツ×2・・・ユニクロのヒートテック。ウルトラとかエクストラではない薄くて軽いタイプ。
−半袖シャツ×2?(記憶が微妙)・・・インナーや室内着用。
−パーカー×1・・・外歩きでも室内でも着れるカジュアルな1枚。
−長ズボン×1・・・ベトナムで300円ぐらいで買ったペラペラのリラックスパンツ。安っ。
−レギンス×1・・・ユニクロのヒートテック。すでに使い古していたためヒート効果は微妙に。
−ハーフパンツ×1・・・アジアのどこかで買った部屋着用の薄い1枚。
−下着&靴下・・・ブラジャー×2、パンツ×3、靴下×3ぐらいだったと思う。
−トレッキングシューズ・・・日本で1万円ぐらいだったかしら。ようやくまともな価格帯。。。
−ビーチサンダル・・・室内での利用に。
−バスタオル&フェイスタオル・・・薄手&速乾性の物。
−スキン&デンタルケア・・・洗顔料、基礎化粧品、歯ブラシ、コップ
−ボディ&ヘアケア・・・ボディソープ、シャンプー、コンディショナー、ボディスポンジ(巡礼開始前日に宿に忘れる(おい))、ボディクリーム
−チェーンロック・・・バックパックを家具などに固定するため。盗られる物なんて何もないとはいえ、とにかく小さくてかわいらしいバッグなので念のため。。。これもバッグの外にロックしておく形。
−雨具・・・折りたたみ傘&レインコート。100均ですよね、言うまでもなく。
−巡礼手帳&巡礼マップ&ホタテの貝殻・・・スタート地のレオンで入手。ガイドブック類は持たずグーグルマップもカミーノ関係の情報アプリもあえて使わなかったので、この紙切れの情報が全てでした。
何年も前なので多少記憶が不確かな面はありますが、概ねこのような感じで、あとはパスポートとか財布とかスマホとか一般的な持ち物です。
改めて見ると、本当にショボい。
それなりの格好が付いてるのは靴とユニクロぐらいで、あとは安物と駆け込みで買った物がずらりと並ぶ、恐怖のラインナップ。足のマメ対策とかも一切する気なし。
文字にすると結構多く見えますが、歩いている最中はほぼ全ての服を重ね着しているので、バッグの中は替えのシャツ2〜3枚・薄手のハーフパンツ・下着のみ。
下着は毎日、シャツやレギンスは宿に早めに着いた時や暖房がよく効いている時に自分で洗濯して、翌日にまた同じ物を…という鬼ローテ。
これに加え、水はサイドポケットにねじ込み、食料品はエコバッグに入れて手で持って歩くのが基本でした。
必要ではなかった物は?
基本的に上記以外は何も必要ではなかった、というのが筆者個人の答えです。
筆者は普段からミニマリストもどきであまり物を持たない方なので、それが数百㎞をひたすら歩き続ける巡礼ともなれば、最小限の持ち物に絞ることに越したことはありません。
実際、サンティアゴ巡礼では『〇〇を持ってくれば良かった』という人より『〇〇は必要なかった(=荷物を少なくすれば良かった)』という巡礼者の方が多い気がします。
巡礼の途中でも街で大抵の物は手に入るので、あらかじめ全てのアイテムを揃えなくても、巡礼開始後に必要に応じて追加購入するのがベターではないかと。
再びサンティアゴ巡礼に行くなら、10Lはちょっと攻め過ぎとしても20Lのバックパックで充分だと個人的には思います。
【2022年1月追記】2021年12月末から2022年1月上旬に2度目のサンティアゴ巡礼に行き、20Lのバックパックで余裕でした。
せっかくスペインに行くならお土産も色々買いたい…という人でも筆者のようにスーツケースやサブバッグをスタート地からゴールのサンティアゴに郵送できるので、巡礼中は身軽にし、巡礼後に荷物をピックアップしてから自由にショッピングや観光を楽しむのも良いでしょう。
あとは個々の巡礼の目的や趣味、そして日程・時期などにより、必要なアイテムを追加するのがベスト。
巡礼中もオシャレを楽しみたい人はもっと服を持っていけば良いですし、写真好きならカメラにもこだわりたいでしょう。
夏ならルートによっては海や川で泳げるので水着を持っていくのも良いですし、冬は当然ながら防寒具をしっかり揃える必要があります。
ただし、上に書いたことと矛盾しているように思われるかもしれませんが、背負っている荷物が重ければ重いほど宿に着いてそれを下ろした時の解放感・快感は増大します。
そのため自分を試したい、より大きな達成感を得たいという人は荷物を多めに(不要な物を無駄に持つという意味ではありませんが)、逆に少しでもラクに歩きたい、体力にそこまで自信がない、という人は極限まで荷物を少なくすると良いでしょう。
公営アルベルゲを利用しないなら寝袋は不要
サンティアゴ巡礼では必須と思われがちなアイテム・寝袋ですが、これは巡礼者用の簡易宿である公営アルベルゲ(Albergue público)を利用する際に使うため。
公営アルベルゲは寄付制のタイプもあり、サンティアゴ巡礼では最も安く泊まれる宿ですが、巡礼路には一般のホテルやホステルも多数あります。
そのためもし公営アルベルゲを利用せず一般のホテルやホステルなどに宿泊するのであれば、寝袋を持参する必要はありません。
寝袋だけでも結構な重さ&容量になるので、宿泊する予定の施設によって持っていくか否かを決めると良いでしょう。
【2023年】3度目の巡礼後の追記
さて最初にこの記事を書いてから2021年末〜2022年1月上旬、そして2022年末〜2023年元旦の2回巡礼に行ったので、改めて荷物に関するいくつかのポイントを書き加えたいと思います。
- 消耗品・・・シャンプー、石鹸orボディソープ、女性の場合生理用品などは巡礼途中の街でも購入できるので、最初から全てを買い揃える必要はない。
アレルギーや極度の敏感肌などがあれば別だが、そうでなければその都度現地で追加調達した方が荷物を減らせる。 - 杖・・・買わなくても結構良い感じの枝が森で拾える。
- おすすめの店・・・フランス発のスポーツ用品店Decathlonで、巡礼に必要な物はほとんど手に入る(寝袋・速乾性タオル・防水ジャケット&パンツ・バックパック・サンダルなど)。
メインのバックパックや靴は身体に慣らすためあらかじめ準備しておくのが無難だが、それ以外は現地でも買える(公式サイト:https://www.decathlon.com/)。
ま、要はあらゆるアイテムは現地で手に入るので、特に長い巡礼の場合、全ての持ち物をスタートから完璧に買い揃えなくても大丈夫、ということですね。
Decathlonは低価格で幅広いスポーツやアウトドア関連のアイテムを取り揃えており、最高のクオリティを売りにするブランドではありませんが、逆にあまり高級なグッズを持ち歩くのも賢明ではないというのが筆者の個人的な考え。
巡礼ではアルベルゲのような共同ドミトリータイプの宿泊施設に泊まったり、心身の疲労が溜まったりしやすいことから、所持品の紛失や盗難の可能性も決して少なくありません。
特に靴やバックパックはあまりにクオリティが悪いとマイナスなのは間違いありませんが、それ以外は失くしても惜しくない程度のアイテムにしておくのが無難ではないかと思います。
持ち物を選ぶ上で大切なポイントとは?
ここまでスペイン北部のサンティアゴ巡礼で必要な持ち物を、体験者の視点でまとめました。
1つ個人的な見解を加えると、巡礼はサンティアゴに到達できたら成功、できなかったら失敗というものではありません。
事前にトレーニングをバッチリして高性能のグッズを買い揃えても怪我などで途中で断念する人もいれば、筆者のように旅の途中に立ち寄って適当な格好でも完歩できる人もいます。
でもそれで他人と優劣を争ったり、比較したりするのは全くナンセンス。
長い距離を歩いた方がスゴイとかインスタでいいねをたくさんもらえたらエライとかではなく、大切なのは自分のオリジナルの巡礼を描くこと。
持ち物も他人があれを持っていけ、これは必要じゃないとあれこれ言ったとしても、極論を言えば筋トレフェチならお気に入りの鉄アレイを持ち歩いたっていいと思います。正解不正解ではないのですから。
長い長い巡礼では疲労・不安・飽きなど様々な感情が湧いてくるので、瞬時に気分を上げられるお気に入りのアイテム(音楽・お菓子・香水etc.)があれば、バッグやポケットに忍ばせておくと良いでしょう。
2020年以降はコロナでサンティアゴ巡礼が遠いのが現状ですが、少しでも早く世界中からの巡礼者が戻ってくることを願います。
Buen camino!