世界最高峰の選手が集まる欧州サッカーは、サッカーファンなら一度は現地で生観戦したいもの。
しかしもし一人で海外サッカー観戦となると、治安は?周りから浮く?など、様々な不安も。
この記事では欧州各国の多数のスタジアムに女一人で観戦経験のある筆者が、欧州サッカーに一人で観戦する際のポイントをまとめました。
ひとりでサッカー観戦はアリ?ナシ?
さてまず最初の大前提の疑問として、ヨーロッパでサッカー観戦をする際、ひとりで行くのはアリなのかナシなのか、という点から始めましょう。
ヨーロッパと一言で言っても東西南北でサッカー文化も習慣も違いますし、さすがに何千何万というスタジアムに足を運んだことがある訳ではないですが、基本的な答えは『アリ』で良いと思います。
一般的にクラブの試合でも代表戦でも、友人や家族、パートナーと観戦する人が多いのは確かですが、一定数のひとり観戦者は見かけます。
それがアジア人でさらに女性だと結構目立つ場合もありますが、幸い筆者は欧州20ヶ国以上で何十試合とひとり観戦した中で、トラブルに巻き込まれたり危ない目に遭ったりした事は一度もありません。
しかし、だからと言って危険な要素が一切ないかと言うと、それもまた違うと思います。
これはサッカー観戦に限らず海外旅行全般にも言えることですが、やはり日本は世界的に見ても治安が良く人々が大人しくマナーやルールを守る国であり、逆に言うと欧州ではそんなに皆が行儀よく観戦なんてしません。
熱狂は文字通り狂気と紙一重でもあり、それが白熱した試合であればあるほど、衝突や暴動は起こりやすくなります。
では、特に女性や初心者が安心してひとりでも欧州でサッカー観戦するためは、どういったポイントが大切なのでしょうか?
ひとりで観戦に行く時に抑えたいポイント!
試合選び
まず最初のポイントは、どの試合を観戦するか。
欧州サッカーでは主にクラブと代表の試合があり、クラブならリーグ戦・チャンピオンズリーグ・カップ戦etc.、代表ならワールドカップ・EURO・その予選・親善試合etc.があります。
どの大会やリーグにもそれぞれ異なる魅力や特徴があるため、応援してるクラブor代表チーム・見たい選手・行きたい都市・旅の日程・予算etc.を考慮して、観戦試合を決めると良いでしょう。
ただしこの後にも解説しますが、試合によってチケットの取りやすさや価格、スタジアムの雰囲気は全く違うため、どんな試合でも旅行者が気軽に観戦できる訳ではありません。
また、試合によっては夜21時以降に開始することもあるため、遅い時間にキックオフの場合は帰りの交通機関もチェックするようにしましょう。
席選び
観戦する試合が決まったら、続いて席を選びます。
席は、大まかな3つほどのカテゴリーのみ選択できる場合もあれば(W杯やEUROなど)、『カテゴリーA・列10・席番120』のように具体的な席まで指定できる場合も。
最も重要なのは、ホーム側の席かアウェイ側の席かを確認すること。
W杯などを除いてほとんどの代表戦もクラブの試合も、アウェイ側のチームのサポーターにはスタジアムの一角に席が指定されており、アウェイ側のチームグッズを身に着けているとホーム側の席に入場できないこともあります。
ただし、一般的にアウェイ席は数が少ない分熱狂的なサポーターのみが遠征する傾向にあるため、「どっちかと言えばアウェイのチームの方が好き」程度の熱量なら、ホーム席を取るのが無難かもしれません。
またゴール裏も特に熱狂的なホームサポーターが陣取ることも多いため、こちらもガチのサポーターでない限りは避けた方が良いでしょう。
もし特にどちらのチームのファンでもなく雰囲気を楽しむのが目的なら、2階席より上の席がおすすめです。
服装や持ち物
もし応援するチームのユニフォームやグッズを持っているなら、ぜひ身につけていきましょう!
試合当日にはスタジアムで様々なグッズ販売がされることがほとんどなので、その場で購入するのももちろん◎。
ただし繰り返しになりますが、アウェイ側のチームグッズやチームカラーの服装をホーム側の席で身に着けるのはNGです(その逆パターンも同様)。
例として、リヴァプールvsエヴァートンをリヴァプールホームの席で観戦する場合、エヴァートンのチームカラーである青の普通のシャツなどもダメということですね。
そしてスタジアムによってはA4サイズ以上のバッグ持込禁止など規定が厳しいことがあるので、荷物は極力少なくするのが鉄則です。
これは入場時の手荷物チェックの時間を短縮すること、そして時に数万人の観衆が詰めかけるスタジアムでスリや盗難を防ぐことに繋がります。
同様に、ブランド物のバッグや高価なアクセサリーなども持たないのがベター。
最近はスタジアム内はキャッシュレス決済のみのお店も多いので、現金も最小限のみで良いでしょう。
ただし、スタジアム入場時にチケットと共にIDを求められることもあるので、パスポートや顔写真付きの公的な身分証明書は忘れずに持参しましょう。
観戦中のマナー
いざ試合が始まれば、全力で楽しむのみ!
欧州では喜怒哀楽をストレートに出すサポーターが多く、味方の良いプレーには歓声や拍手、相手のファウルやレフェリーの微妙なジャッジには容赦なくブーイングを浴びせるのが典型。
当然、ホーム席ならホーム側のチームを、アウェイ席ならアウェイ側のチームを応援するのが原則です。
自分のチームへの応援や相手チームへのブーイングに関する現地語をいくつか覚えていくと、より観戦が楽しめますよ!(ただし差別用語などはもちろんNG)
実際のところ、ホームとアウェイがどれぐらい明確に分かれているかは試合によってかなり差があり、例えばマイナーチームがホーム・超人気チームがアウェイの試合だったりすると、ホーム席にもアウェイチームのファンがわんさかいることも。
海外では見知らぬファン同士でも気軽に話しかけてきたりすることがありますが、試合がヒートアップするにつれてファンも熱くなりがちなので、他の人と絡む場合は充分注意しましょう。
もし1階席で観戦する場合は、好きな選手のユニフォームをゲットすることに挑戦してみるのもおすすめです。
観戦前後の行動
白熱した試合の前後の時間も、サッカー観戦の楽しみの1つではないでしょうか。
特に大きな試合の場合には試合前は街中が高揚感に溢れ、試合後は興奮そのままにお祭り騒ぎになることも珍しくありません。
しかしこの賑やかなお祭りは、ちょっと間違うとたちまち喧嘩やトラブルに発展することもしばしば。
特にパブやバーに飲みに行く際は、不穏な気配を感じたらすぐに店を出るなどして、周りの様子を伺いながら楽しむことが大切です。
また試合観戦時と同様、必要以上の現金や貴重品は持たないで出歩くようにしましょう。
避けた方が良い試合や国はある?
前述の通り、筆者自身は様々な国でサッカー観戦をしてきた中でトラブルなどに出くわしたことはありませんが、できれば初心者や一人旅での観戦は避けた方が良いと思われる試合はあります。
あくまでも個人的な見解ではありますが、例えば以下のような試合です:
- ダービーマッチ・・・同じ都市や地域のライバルクラブ同士が対戦するダービーマッチは特に白熱するため、ピッチ内外が大荒れになることも。
中には100年以上続く超伝統ダービーもあり、旅行者がふらっと立ち寄るには過激すぎるかもしれません(そもそもチケット入手が困難な事が多いですが)。
例:アーセナルvsトッテナム(ロンドン)、ASローマvsラツィオ(ローマ)など - クラブや代表の命運をかけた極めて重要な試合・・・こちらも通常チケットは容易には手に入りませんが、仮に入ったとしても気をつけたい試合です。
欧州のアツいファンにとってサッカーはただのスポーツではなく、生活の一部。
クラブなら下部リーグへの降格がかかった試合、代表ならW杯やEUROの出場or敗退がかかった試合などは、勝つか負けるかで天国と地獄のような差が出るため、軽いノリで観戦するのはリスキーです。 - 地元民しか行かないような試合・・・欧州サッカーと一言で言っても誰もが知る強豪チームだけではなく、3部や4部リーグのクラブ、そしてFIFAランキング170位ぐらいの弱小国もあり、その聞いたこともないようなチームにも必ず熱烈なサポーターがいるものです。
明らかな新参者のファンに対して寛容的か否かはクラブや国によって違いがあるため、必ずしも温かく歓迎されるとは限りません。 - 転売サイトからしかチケットが購入できない試合・・・クラブの試合であれ代表戦であれ、チケットはクラブ・代表・UEFAなどの公式サイトから購入するのが基本。
海外にはチケット転売サイトも多数ありますが、定価の数倍で販売されるのは日常茶飯事、その上試合当日スタジアムに入場できなかったなどのトラブルも無数にあるようです。
一般的に大きな試合であればあるほどチケット競争率は激しくなりますが、安易に転売サイトを利用するのはおすすめしません。
例として、2022年9月に行われたネーションズリーグの試合の際、クロアチア代表の公式サイトにはクロアチア市民のみチケット購入可能となっていました。
この場合、オンラインでチケット購入時に国籍やパスポート番号などを入力する→国籍が異なると購入できない、という仕組みではないかと思われます。
さらに転売サイトなどで購入できたとしても、入場時にIDが確認され、チケットに記載された名前と異なると入場を拒否されるとの警告が。
欧州の他の国々での筆者の実体験としてはID確認はされない場合も多いですが、万が一のトラブルを避けるためにも正規のチケット購入&ID持参は必ず心がけておきましょう。
また、『欧州』の範囲の定義は場合によって異なりますが、イスラム圏でサッカー観戦をする場合は、女性ひとりは念のため避けた方が良いかもしれません。
欧州に含まれるイスラム圏の代表国としてトルコがあり、筆者自身はまだ観戦経験はありませんが、トルコ人はかなりサッカー熱が熱いことでも知られています。
筆者が今のところ観戦経験があるイスラム圏の国がいわゆるゆるめのイスラム教と言われるアルバニアとコソボなのですが、いずれのスタジアムでも女性ひとりで観戦していた人はほぼ見かけませんでした。
いやそもそもアルバニアでサッカー観戦なんかしませんがな😩、と言われるかもしれませんが、やはり基本的にはイングランド・ドイツ・スペインなど“西側”の主要国の方が女性でもひとり観戦しやすいのではないかと思います。
初心者でも観戦しやすいのは?
それでは逆に、初心者や女性ひとりでも観戦しやすいのはどのような試合でしょうか?
『雰囲気的に見やすい』≠『チケットが取りやすい』のため、旅行のついでにスタジアムに寄ってその場でチケット購入して…という訳にはいかない場合も多いですが、個人的にハードルが低いと思う試合の例は以下の通りです:
- W杯やEURO・・・サッカー界はもちろんスポーツ界を代表するイベントであるW杯やEUROは、世界中のファンが集まるまさにエンターテイメント。
特に決勝トーナメント以降は組み合わせが決定する前からチケットを購入するファンが多いため実際の対戦国以外のファンも多く、どちらかの応援ではなく純粋にスポーツとして楽しみたい人など、様々なスタンスで観戦しやすいのがポイント。
W杯は2026年から、EUROは2016年に参加国を拡大し更に2028年にも再拡大すると言われているため、カードにこだわらなければチケット入手の難易度は下がりそうです。 - 下位クラブ相手の試合・・・クラブの試合では対戦相手によってチケット価格や取りやすさが変わるのが普通で、下位クラブやマイナークラブが相手ならチケットは取りやすくなるでしょう。
特にカップ戦はリーグ戦と違いほとんどが平日の夜に行われるため、ビッグクラブの試合でも比較的チケットが取りやすいのがメリット。
ビッグクラブvs下位クラブの場合、なんだかんだでサッカーの醍醐味であるゴールシーンが多く見られやすいのもポイントです。 - 観光客が多い都市での試合・・・観戦する試合の場所が観光都市であれば、英語が通じやすい・人々が外国人慣れしている・試合前後にも観光やグルメを楽しめるetc.、特に旅行とセットでサッカー観戦をしたい人には大きなメリットがあります。
交通の便という点でも、小さい地方都市の試合だとスタジアムにたどり着くまでに何時間と要するのに対し、大都市であれば空港→ホテル→観光→スタジアムのように、効率よく観戦できるでしょう。 - 親善試合・・・親善試合は“フレンドリーマッチ”の名が示すとおり、クラブの試合でも代表の試合でもバチバチに白熱することが少ないため、ファンもガチで応援<ゆるく観戦というスタイルの人が多め。
親善試合は『本気度』は多少下がるかもしれませんが、いわゆる“負けられない戦い”ではないためオープンな展開でゴールが生まれやすく、むしろエンターテイメント性が高くなる可能性も。 - キャパシティが大きいスタジアムでの試合・・・大きいスタジアムには1階席から5階席以上ある所もあり、基本的に『キャパシティが大きい=色々なファンが来る、チケット価格も幅広い』という認識で良いと思います。
つまり毎週応援に来る筋金入りのサポーターもいれば、興味本位で立ち寄る人も一定数いるということですね(上記のダービーマッチなどを除く)。
欧州にはキャパシティが7万人以上の巨大スタジアムもあちこちにあり、その圧倒的な迫力を体験するだけでも充分足を運ぶ価値があります。
以下は、欧州の巨大スタジアムの代表例です:
ライブ会場と同じようなイメージですが、キャパシティが小さいスタジアムはピッチとの近さや臨場感が大きなメリット。
なので純粋な観戦体験としては巨大スタジアム以上に満喫できる可能性もありますが、基本的にスタジアムが小さければ小さいほど地元民率が高くなり、旅行者率は下がります。
そのため数千人規模のあまりに小さいスタジアムだと、良いか悪いかはともかく、それなりに目立つことになる覚悟は持っていた方が良いかもしれません。
まとめ
欧州在住の筆者が、自らの経験も含めてひとりで欧州サッカーを観戦する際のポイントをまとめました。
特に女性や海外旅行初心者だと、ひとりで海外のスタジアムにサッカー観戦に行くのは少し勇気が要るかもしれません。
しかしいくつかのポイントに気をつければ、きっと忘れられない素晴らしい観戦経験ができるはず。
ぜひ本場のスタジアムで、迫力あるサッカー観戦を堪能してみてくださいね。