EUは夏のバカンスシーズンを前に日本を『安全国』リストに追加、観光目的など不要不急の渡航者を再び受け入れることを発表しました。
この変更のおかげでコロナ禍以降困難だったヨーロッパ旅行が一歩近づきますが、その詳細や条件は?
欧州在住の筆者が解説します。【2021年6月4日情報】
そもそも『安全国』とは?
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2021年6月、EUは日本を『安全国』リストに追加、それまで不可だった観光での渡航が可能になりました。
で、その『安全国』って何なの?という話ですが、要はEUがEU外の世界各国の新型コロナウィルスの状況(新規感染者数や検査数、陽性率など)をチェックし、安定していると判断した国です。
この安全国リストから外れた国は原則として不要不急のEU渡航は不可、渡航できるのはEUに居住権を持つ人や特定の職種の人などに限定されるため、『安全国』か否かは非常に大きな差があると言えるでしょう。
この安全国に入る条件の一つである『過去14日間の人口10万人当りの感染者数』がこれまでの25人から75人に引き上げられたことで、今後もリストに加わる国は増えていきそうです。
それではもう少し詳しくこのポイントについて見てみましょう。【※2021年9月追記:EUは再び日本を安全国リストから除外しました】
陰性証明や隔離の有無は各国による
観光客を受け入れるのは良いとして、どうせ出国前のPCR検査の陰性証明や入国後の隔離が要るんでしょ?と思うかもしれません。
が、これはEU加盟国がそれぞれ判断するとしており、スペインなどすでに日本からの渡航者に対し陰性証明も隔離も不要としている国もあります。
まあ普通に考えて陰性証明はまだしも10日や14日の隔離がある状態で気軽に旅行に行ける人は多くないでしょうから、観光客の増加を望むなら入国後の隔離を免除するなりルールを緩和するなりするのが自然ではないかと思います。
もちろんEU加盟国全ての対応を当サイトでチェックした訳ではなく、またこういった規制は非常に流動的なので、EUに渡航したいor渡航予定がある人は各自で渡航国の在日本大使館や外務省などの公式サイトで最新の情報を確認するようにしましょう。
日本は2021年1月末に除外されていた
今回めでたく日本が安全国リストに加わったわけですが、正確には「復帰した」という表現が正しいかもしれません。
こちらのサイトで時系列が分かりやすく見られますが、EUはコロナの拡大が深刻化した2020年3月にEU外からの渡航を原則禁止にし、その後第一波が収まった2020年6月末に最初に発表した15カ国の安全国リストに日本も含まれていました。
2020年も夏を前に、観光業の救済を目的に渡航制限を緩和していたということですね。
しかしその後欧州や世界各地で第二波・第三波が発生したこともあり徐々に安全国は少なくなっていき、2021年1月28日、ついに日本も除外されリストは7カ国のみに。
筆者はこの時日本に一時帰国中だったので鮮明に記憶していますが、
【2021年1月28日】EUが日本を安全国から除外→【1月30日】オランダが日本からの渡航者に陰性証明&隔離要請を2月2日から課すと発表→【2月1日】適用日を2月4日に変更と発表
という流れで、オランダの場合はEUの安全国リスト変更から実際の規制厳格化まで約1週間のタイムラグがありました。
今回は厳格化ではなく緩和なのでむしろ早くしろと願う人は多いかもしれませんが、必ずしも各国が即時に規制変更するとは限らないと認識していると良いかもしれません。
安全国リストは2週間おきに見直し
この安全国リストは各国の状況により2週間おきに見直すとしています。
しかし同じくSchengenVisaInfo.comのページを見ると2020年6月末に最初のリストが公表されてから2021年5月まで(今回の日本追加の前の時点)で計7回の除外または追加に留まっており、そこまで頻繁にコロコロと変更はしていない印象です。
さらに一度除外→復帰というのも今回の日本が初のケースで、2021年1月末に除外されてから4ヶ月ほどで表舞台に舞い戻って来れた(?)のはとりあえず朗報と言って良いのではないでしょうか。
もちろん状況が悪化すれば再度除外という可能性もあるので、このまま日本の状況が安定・改善していくことを願うばかりですな。
これで日本から欧州に自由に旅行ができる?
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いやあ、本当にEUさんが日本を安全国リストに戻してくれて良かった、これで明日からでもヨーロッパ旅行に行けるぞー!\(^o^)/
・・・とウキウキ気分なところに水を差すようですが、本当にこれでいつでも日本からフランスやスペインやイタリアに行けるのでしょうか?
結論から言うと、行けるのは行けます。
外務省の『海外安全情報』では東西南北欧州全域を“レベル3・渡航は止めてください。(渡航中止勧告)”としていますが、法的な強制力はないとしているので(※参照ページ)、ヨーロッパだろうがアメリカだろうがアジアだろうが、渡航先の国側が日本からの渡航を許可すれば渡航は可能ということになります。
しかし、日本に帰ってくる時が問題です。
日本帰国時の規制は強化傾向に
はい、そうです。
日本の水際対策はザルだザルだと言われていますが、全く何もしていない訳では決してありません。
2021年6月4日時点で日本人も含め日本に入国する全ての人は、
・出国前72時間以内に受けた検査の証明書
・14日間の公共交通機関の不使用&自宅などでの待機
・位置情報の提示や接触確認アプリの導入などに誓約
といった措置が取られており、さらに変異株が流行している国に過去14日内に滞在歴があると追加措置として入国翌日から3日間検疫所が確保する宿泊施設に待機する必要があります。
このいわば『変異株流行国リスト』は非常に頻繁に更新されており、EU加盟国の多くがバッチリ含まれています。
さらにEUではありませんがイギリスからの入国者はこれよりワンランク厳しく同宿泊施設での待機が6日(2021年6月7日0時から)、さらに最も厳しいインドなどからは10日待機。
イギリスは6月4日に規制厳格化の対象になるまでは3日間待機だったので、今後イタリア・フランス・スペイン・ドイツ・ギリシャetc.EUの観光大国も、変異株の拡大など状況が深刻になればイギリスのように待機日数が長くなる可能性はあるでしょう。
確かにオーストラリアやら台湾やらよりは遥かに緩いですが、筆者がオランダから一時帰国した2020年11月は本当にザルだったので(個人の意見ですが)、その頃に比べれば茶こしぐらいにはなってる気がします。
また、さらっと書きましたが、この『出国前72時間以内に受けた検査の証明書』もなかなか厄介で、指定された要件を満たしておらず搭乗拒否という事態も多発しています。
日本と同様、ヨーロッパでも検査を受けられる場所は至る所にありますが、厚生労働省の公式サイトに記載された要件をしっかり確認し、不安であれば現地日本大使館に確認するなどして、確実に搭乗・日本入国ができるよう不備のない証明書を用意しましょう。
渡航にワクチン接種は必要?
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このEUが日本を安全国リストに、というニュースに先立って『ワクチン接種者はEUに渡航可能』などという情報を目にした人もいるのではないでしょうか。
筆者も日々更新されるニュースを追いながら、2021年5月にいわゆる“ワクチンパスポート”についての情報をこの記事でまとめました。
ん、ということはEU渡航にはワクチン接種が条件なの??
いえ、そうではありません。
今回日本が安全国に指定されたことで、ワクチン接種は条件ではなくなります。
ここで改めて2021年6月4日時点の日本以外の安全国リストを見てみましょう:
・オーストラリア
・イスラエル
・ニュージーランド
・ルワンダ
・シンガポール
・韓国
・中国(香港・マカオを含む)
EUからすると観光業においての超重要なお客様、アメリカやイギリス、カナダなどは含まれていません。
もちろんこれらの国も状況が改善することで安全国リストに加わるはずですが、要は安全国に入らない国からでもEU入国の14日以上前にワクチン接種を完了していれば、EUに渡航が可能になりますよ、と。
ただしワクチンさえ打てばどんな悲惨な状況の国からでもいつでも自由に渡航できる訳ではなく、特に変異株が拡大する地域などに対して“緊急ブレーキ”、つまり入国制限の強化を行えるとしています。(※参照ページ)
この辺りの具体的な条件や対象国はハッキリとしていませんが、まとめるとこのようになると思われます(2021年6月4日時点):
①変異株流行などリスクが高い国
EU居住者や医療従事者など特定の職種の人を除き渡航制限あり(インドなど?)
②①&③に含まれない全ての国
ワクチン接種を条件に不要不急の渡航可能(アメリカ・カナダ・イギリスなど?)
③安全国
渡航目的やワクチン接種済みか否かにかかわらず渡航可能(日本・オーストラリア・イスラエルなど?)
これらは2021年6月4日時点での情報を元にしていますが、常に変更・更新しているので、EUに渡航する際は必ず各自で最新情報を確認するようにしましょう。
【追記:欧州理事会の公式サイトにEU外からの渡航についての基本的な情報が更新されました。】
当サイトでは渡航などに関するいかなるトラブルにも責任は負いかねますので、御理解の上で参考程度にしてもらえればと思います。
【7/13更新】EU加盟国で入国要件にワクチン接種を求める国が!
2021年7月9日、EU加盟国で初めて旅行者の入国にワクチン接種を義務付けることを発表したのは、地中海のミニ国家マルタ。
マルタは欧州で最初に集団免疫を獲得したとされる世界でもトップクラスのワクチン接種率を誇り、2021年5月〜6月の新規陽性者はほぼずっと1日当り一桁台と、極めて安定していました。
ところが7月に入って2桁台に増え始め、7月10日には100人を超えます。
と、数字だけ書くと大したことなくね??という気がしますが、マルタは人口約44万人のミニ国家のため、日本の人口比にすると3万人規模ということに。
ただしマルタ保健省の発表によると、陽性者のほとんどは外国籍で、90%以上がワクチン未接種としています。
(参照:マルタ保健省)
さらに病院で治療を受けているのは3人のみ、全て外国籍でうち2人はワクチン未接種、残りの1人は2度目のワクチンをその週に接種したばかりでワクチンの完全な効果が得られてなかったとのこと。
つまりこの時点ではまだマルタ市民には全く言っていいほど影響が及んでいないようですが、同記事によると“市民の健康と生活の質を守る”ために、7月14日から全ての旅行者に対しワクチン接種を入国要件としたようです。
こちらの記事で詳細をまとめました。
このマルタの入国要件にワクチン接種は異例とも言えますが、2021年7月時点で感染拡大により規制強化をしている国は多数あり、今後もどの国がどのような入国規制を行なうかは全く読めないと言っていいでしょう。
2020年と違い2021年はワクチンが救世主になるかと期待されていましたが、残念ながらコロナ前のように自由気ままに旅行できるようになるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。。。
EU各国に独自の規制がある
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ここまで解説してきたのは、「EUが日本からの観光客を受け入れ再開しますよー😍」という喜ばしい内容ですが、EU各国でそれぞれ行なっている規制は異なります。
例えばデンマークではEUではいち早く『コロナパス』と呼ばれるシステムを導入し、ワクチン接種済み・陰性結果・コロナ感染から回復済みのいずれかであることを専用アプリで提示することでレストランやカフェ、その他観光スポットに入場できる仕組みに。
似たようなシステムは他のEU各国でも続々と導入されており、特に多くの人が集まるイベントではこういった措置が当面は必須ではないかと言われています。
つまり、仮に入国時にワクチン接種や陰性証明が不要でも、スポーツ観戦や音楽フェス、あるいは美術館やテーマパーク、さらにはカフェでコーヒー1杯飲むのにもそれらが必要になる可能性があるわけですね。
特にワクチン接種と違い陰性証明は72時間を期限としている場合が多いので、それが各スポットや店の入場or利用条件になっていると、72時間を過ぎるごとに検査を受けないといけないことになります。
そのため各国各地域でどういった規制や措置が施行されているかを事前にチェックすることは非常に大事で、さもないとせっかく入国したは良いが予定通りに観光ができないという残念旅行になりかねません。
従来であれば旅行先を決める際は行きたい場所ややりたいことを重要ポイントにする人が多いと思いますが、コロナ禍が収束していない現在は、『規制の緩さ』も考慮すると良いかもしれませんね。
現地のアジア人差別や治安は?
このEUが日本からの観光客解禁というニュースをヤホーでチラ見したところ、わーいわーい\(^o^)/と無邪気に喜んでいるコメントはほぼ見受けられず、「アジア人差別ガー」「経済悪化で治安ガー」といったネガティブな反応が溢れていたことに驚きました。基本ヤフコメは黙ってスルーですが、あえて反応します。
もちろんそういった面がゼロだとは言いません。
が、ヨーロッパの人々が欧州に住んでいる日本人に加えて見た目がほぼ同じの中国人や韓国人、ベトナム人など数千万人のアジア人を一斉に差別や攻撃しているのでしょうか?
そんなことはありえません。
凄まじい偏見もいいとこです。
繰り返しますが、欧州は100%安全ですよ、差別もトラブルも一切ありませんよと言ってるのではありません。
が、それらはコロナの前から一定数存在していますし、日本でだって差別やいじめは目に余るほどありますよね。
日本の各地、職場や学校で日本人や外国人に対して差別をする日本人が1人でもいたら、『日本人は』『アジア人は』差別主義者!『日本は』『アジアは』危険!!とメディアは報道するのでしょうか?
そういう人が1人でも周りにいると知ったら、みんな恐れて家に閉じこもるのでしょうか?
一部の偏った報道によりあたかもヨーロッパ人が当たり前のようにアジア人を差別しているかのように解釈されるのは、現地でアジア人の筆者に対しコロナ前と何ら変わらず、何の偏見もなく、真摯に接してくれている多くのヨーロッパ人を思い浮かべると、とても悲しいです。
稀に起こるスキャンダラスな出来事は目を引きインパクトを与えますが、コロナ以降も欧州には多くの日本人やアジア人が、ヨーロッパ人の家族・友人・同僚・隣人と共に毎日普通に生活していることを忘れないで欲しいと思います。
もっともこれはオランダ在住の筆者の個人的な意見であり、欧州と一言で言っても国や地域により治安や雰囲気、経済レベルが千差万別なのは間違いないでしょう。それはコロナ前からそうですからね。
そのため渡航前に現地の治安に関する情報収集をよく行うことが、コロナ前に増して大事だというのは事実だと思います。
こちらは約1年前、同じく当時EUが日本などからの渡航を解禁した際の記事です。
改めて読み返しましたが、1年が経とうとしている現在でも参考にしてもらえる部分はあるかと。
治安や規制については渡航前はもちろん現地に着いてからもよく情報をチェックし、一定の警戒心は保つ。
しかしあまりにビクビクしたり後ろめたさを感じたりしてもせっかくのヨーロッパを楽しめないので、可能な限り観光・グルメ・ホテル滞在を満喫し、現地経済をサポートする。
これが筆者の考えです。
楽しみやメリットより不安やデメリットが多いと思うなら、当面欧州旅行は控えた方が良いでしょう。
しかしその逆なら、コロナ禍で溜まりに溜まったストレスを吹っ飛ばすが如く、規制を破らない&ハメを外しすぎない範囲で思いっきり楽しみましょう。
すでにバカンスのことばかり考えている現地人に見習って、ポジティブにあれこれ空想するのも悪くないと思いますよ:)
まとめ
2021年6月、EUが日本からの観光客を受け入れを再開したことについての情報をまとめました。
陰性証明や入国後の隔離の有無などまだ各国の対応で不明な点はありますが、ひとまず良い流れであることは間違いないでしょう。
日本帰国時の規制が今のままだとすぐの欧州旅行は難しいかもしれませんが、このまま感染が落ち着いていくことでそれも緩和されるのを待つばかりですね。
少しでも早く、そして一人でも多くの人が安全に、楽しく旅行ができる日が戻ることを願います。