2020年以降、新型コロナウィルスによる甚大な被害を受け、厳しいロックダウンや渡航制限が施行された欧州各国。
それでも2021年春頃から多くの国で段階的に規制緩和が行なわれるなど、明るい兆しも。
この記事ではオランダ在住の筆者が、2021年6月時点での現地の最新情報をレポートします。
数字で見るオランダの状況&概要
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さて個人的な感想や印象をうだうだと語るのもいいですが、まずざっくりとしたオランダの状況と共に具体的な数字をチェックしてみましょう。
欧州と一言で言ってもやはり各国で規制の内容や厳しさ、そして当然感染者数も異なります。
欧州の中では小国であまり日本のメディアで登場しないオランダは、このような感じでした。
欧州基準ではやや緩めの規制で対応
人口およそ1700万人のオランダでは2020年3月に第一波に見舞われ最初のロックダウン、その後夏まで一旦落ち着いたものの秋にさらに大きな第二波が来て再びロックダウン、そして少し落ち着いたと思ったら年末前後に第三波・・・といった典型的な欧州のコロナパターンとも言える状況でした。
ただしロックダウンと書きましたが、オランダは欧州の中では比較的緩い規制の方で、フランスやスペインのように近所に散歩に行くのも許可が要るとかはなく、また屋外でのマスク着用が義務になったことは一度もありません。(電車やバスなど公共交通機関では2020年7月、店舗や空港など屋内は2020年12月にそれぞれ義務化)
それでもさらなる規制強化として2021年1月に夜間外出禁止令が決定した際は、反対デモを超えてあちこちで暴動が起き、大荒れだったようです(ちょうど一時帰国していて居合わせてませんでした、えへ)
この夜間外出禁止令は、およそ3ヶ月後の2021年4月に撤廃。
この2021年4月からおよそ2週間おきに規制を緩和をし、現在に至っています。
直近の人口100万人当りの死者数は日本以下
続いて最も基本的なデータとして、感染者数&死者数をWorldometers.infoで確認してみましょう。
2020年12月には最も多い日で1日約1万3000人、日本の人口比に換算すると1日の感染者が10万人近いという次元の違う数字を叩き出します。
前述の通りその後1月下旬の夜間外出禁止などさらなる規制強化により一旦減少傾向に向かいますが、2月下旬頃からイギリス変異株の流行などもあり、再び拡大。
データ上では第四波の真っ只中でしたが、ワクチン接種が進んでいることや季節的な背景も踏まえ、2021年4月下旬から段階的に規制緩和を推し進めていきます。
この段階でまだ1日の感染者数は8000人前後だったため規制緩和に懐疑的な意見も当然ありましたが、ご覧の通り数字は急速に減少。
同サイトの直近の1週間(2021年5月31日〜6月6日)のデータによると、人口100万人当りの感染者数は910人。
同データで日本は148人なので、6倍も多いじゃないか!と思うかもしれませんが、注目したいのは人口100万人当りの死者数。
日本が5人に対しオランダは3人と、オランダの方が低くなっています。
累計では日本108人-オランダ1030人と約10倍もの差があるので手放しで喜ぶ訳には行きませんが、2021年6月上旬時点で重症化率が著しく下がっているのは良い傾向と言えるでしょう。
ちなみにこの傾向がより顕著なのは北欧デンマークで、直近1週間の100万人当りの感染者数は1051人と日本の約7倍なのに対し、死者数は0.3人と実に1/16ほど。
デンマークではレストランや美容院などの利用にワクチン接種歴や陰性証明の提示を義務付ける“コロナパス”を導入しており、特にまだワクチンを接種していない若年層の検査が多いためこのような数字になっていると推測されます。
今後新たな変異株などの脅威も起こりえますが、とりあえずこのデータを見る限りではデンマークは『コロナ後』の世界にすでに踏み込んでいると言って良いかもしれませんね。
7月には集団免疫獲得見込み!?
この重症化率の減少にワクチン接種が関係しているのは言うまでもありません。
オランダは欧州基準では決して爆速でワクチン接種が進んでいる訳ではありませんが、それでも6月6日時点で人口100人当りの接種回数は58.2回で、日本の13.7回よりは随分早め。
(データ参照:日本経済新聞)
さらに興味深いデータがオランダの献血サービスSanquinによって明らかになりました。
それによると2021年6月1日時点で献血ドナーの54%が抗体を保有、このまま順調にワクチン接種が進めば7月には集団免疫が獲得できる見込みとのこと。
オランダ語が分からなくてもグラフを見れば一目瞭然ですが、「○jr」は年代を表しており、60代以上のドナーの抗体保有率は軒並み85%以上。
オランダもワクチン接種は医療従事者や介護関係者を除くと年齢が高い順から進んでいるため、このような数字になっているのは当然と言えるでしょう。
ワクチン接種に加え感染から回復した人も抗体保有率を押し上げていると思われ、あまり自慢気に紹介するのもアレですがオランダの累計の感染者数は全人口の約9.7%(日本の約16倍(小声))となっており、ワクチン接種者がこの時点で少ないであろう18〜30歳の抗体保有率が31〜50歳の年代を上回っているのも特徴です。
なお地中海の小国マルタは5月にすでに集団免疫獲得したそうで、欧州の多くの国でも夏にはそれに続くと思われます。
予定通りに規制緩和が進み楽観的な雰囲気
こういったポジティブなデータが出ていることもあり、やはりオランダの全体的なムードとしては楽観的な印象が日に日に濃くなっている印象です。
先に述べた規制緩和の計画は、第四波に揉まれていた4月中旬にこのような形でオランダ政府から発表されていました。
細かい翻訳はスルーするとして、具体的な緩和の内容を日程も入れて明記していることが分かりますね。
もちろんこれは計画であって、感染が拡大した場合には延期や変更の可能性も含んでいる訳ですが、6月上旬までは概ね予定通りに進んでいます。
この辺りの考え方は人ぞれぞれでしょうが、オランダも2020年10月から半年も厳しい規制を続けていて特に飲食業や観光業、イベント関係は大打撃だったため、まだ感染が収まっていない時点から今後の緩和予定を明確に発表したことは、そういった職種の人々に希望を持たせる為にもプラスだったと思います。
ざっくりとした予定が分かればそれまで店の改修をするなりホームページをリニューアルするなり、準備期間として時間を使えたりもしますしね。
消費者側もそれらの再開を何ヶ月と待ちわびていたため、美容院なりカフェのテラスなり美術館なり劇場なり、オープンすると同時に予約が殺到というのがお決まりのパターンになっていますが、各施設や店舗ではマスク着用や事前予約などのルールがあるおかげもあってか、これまでのところ大きな感染再拡大は招いていません。
もっともこの夏前に感染が落ち着く&規制緩和→わーいめでたしめでたし\(^o^)/という流れは1年前と同じなんですが、2021年はワクチン接種が進んでいるというのが決定的な差ですよね。
まだワクチンが存在していなかった2020年は結果的に秋に特大の第二波に見舞われた訳ですが、2021年は果たして・・・。
EUROは完売だが親善試合には興味なし?
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オランダは2021年に1年延期された欧州サッカーの祭典・EURO2020の開催国の1つでもあります。
オランダ最大のスタジアム、ヨハン・クライフ・アレナ@アムステルダムでは地元オランダのグループステージ3試合とベスト16の1試合、計4試合が組まれており、各試合ではスタジアム収容人数の約1/3である1万6000人をそれぞれ動員することが発表されています。
オランダ在住でサッカー好きの筆者としてもEURO観戦は当然狙っていましたが、全試合のチケットは完売のご様子。
一方でそのEURO開幕直前にあった親善試合のオランダvsグルジアでは、観客動員の設定が7500人だったにもかかわらず前日までチケットは完売になっていませんでした。
最終的に完売したのかどうかは未確認ですが、親善試合であること、対戦相手がショボいこと(失礼)、アムステルダムなどのメジャー都市ではなかったこと(オランダ東部エンスへデー)、入場に陰性証明が必要だったことetc.が、チケットの売上を鈍らせていたのではないかと思います。
まあこの辺りはさすが合理的で有名なオランダ人というか、何でも無条件に飛びつくのではなく価値があると判断した場合のみにお金を使う主義なのかなと言う印象。
この親善試合を始め、オランダでは政府監修のFieldlabという団体がスポーツ・音楽・カルチャー・旅行など様々なジャンル&規模のいわゆるテストイベントを随時行なっており、事前に検査を受けイベントに参加→その後感染が拡がらないかをチェック。
アムステルダムでのEUROの試合の観客動員は当初1万2000人としていましたが、この各種テストイベントでの結果や感染状況の安定を経て1万6000人に増加したという経緯があります。
これが適切なのか否かはまだ分かりませんが、これまでのテストイベントの実績や経験を活かし、経済と安全のバランスを取ってEUROを成功させてほしいものです。
バカンスには一定の制限も
このように国内での規制緩和が着実に進み、オランダ市民の様子もリラックスしていっている現状ですが、国外渡航にはまだ一定の規制があります。
一般的なオランダ人のバカンスへの情熱は日本人との比較ではなく、それのために仕事をしていると言っても過言ではありません(もちろん例外はいますが)。
そのため不要不急ではない旅行目的での渡航が可能であるかは、外務省が国や地域ごとに明確に指定しています。
その内訳はこのようになっています:
レッド→【渡航禁止】…いかなる目的でも渡航不可
オレンジ→【真に必要な場合のみ渡航可能(旅行目的は不可)】…オランダ帰国時に陰性証明及び自己隔離が必要
イエロー→【注意が必要だが旅行目的での渡航可能】…オランダ帰国時の陰性証明及び自己隔離不要
グリーン=【特別なリスクなし・旅行可能】…オランダ帰国時の陰性証明及び自己隔離不要
この色分けはその国が安全であるかどうかに加え、相手国がオランダからの渡航客を禁止している場合も反映しているため、例えばコロナの状況が安定しているオーストラリアなどもオレンジになっています。
日本も含め基本的にオランダ在住者であっても相手国の国籍や居住権を持っていればオレンジでも渡航可能の場合が多いですが、コロナの状況が安定している国の多くは欧州からの旅行客を禁止にしているので、外国人旅行客として渡航することはできません。
つまり、このチャートを見ればオランダ在住者がどこに旅行に行けてどこには行けないかが、すぐに分かるということですね。
ちなみにこの色分けはコロナに限定しておらず、一般的な『安全情報』も共通のため、シリアなどの紛争地域はレッドになっています。
例として、バカンス先として最も人気の国の一つであるスペインを見てみましょう。(※2021年6月8日時点)
この地図を見て分かる通りスペイン本土はオレンジですが、離島であるバレアレス諸島とカナリア諸島はイエローになっています。
このように色分けは国単位ではなく地域単位のため、同じ国でも行ける場所と行けない場所があるわけですね。
そしてこのいわば『安全レベル』はその地域の感染状況により常時更新されるため、渡航前・滞在中はイエローでも帰国直前にオレンジに変更になり、陰性証明&隔離が必要になるという事態も当然あります。
そのためバカンス大好きオランダ人でも皆が皆無邪気にのほほんとバカンスを計画してはおらず、当面自重するという慎重派はいます。
それでも2021年7月にはEU内の渡航が一定の条件下で自由になるいわゆる“ワクチンパスポート”が導入される予定のため、より多くの人々が国外旅行を楽しむでしょう。
通常であれば金と時間さえあれば(実際多くの人がある)南欧でもアジアでもカリブ海でもどこでも行けたわけですが、コロナ以降はレッドやオレンジに指定されている国は諦めるしかないので、必然的に選択肢が限定されることになります。
ワクチン接種が進んでもコロナ以前のように何の制限もなくどこにでも行けるようになるまでは、もう少し時間がかかるかもしれませんね。
まとめ
全体的に規制緩和が続く欧州の中の一国、オランダの状況や情報を在住者がお伝えしました。
EURO開催国でもあるオランダでもこの記事を書いている2021年6月上旬までは順調に規制緩和が進み、コロナに対する恐れや緊張感はどんどん薄くなっていっている印象を受けます。
そのEUROに加え、本格的な夏のバカンスシーズンが始まればますます人の往来が多くなり街も活気づくでしょうが、2020年のように再拡大を防げるかが注目されます。
完全な収束まではまだ時間がかかるかもしれませんが、少なくともそれに向かって前進していけるよう願います。